2008年8月31日日曜日

タイ秘湯ツアー第3弾 その9







 鉄砲かついで秘湯探し

 ツアー初日、2日目は予定通りに温泉を発見することができず、みんなピリピリしていた。というか、神経を尖らせていたのは私だけかもしれない。今となっては、タイの秘湯探しがライフワークになってしまったからだ。後2日間で全行程を回れるだろうか? まぁ、行ける所まで行くしかないか。だって、ここは、タイだも~ん!!

 8月18日AM7:30、気合を入れて出発。国道1号線を南下して、道路沿いの民家でンガーオ郡ドッカムタイ村の場所を訊ねた。なんだか、舌をかんでしまいそうな地名である。私が自らペンをとり、訊いた通り地図を描いた。ポイントからポイントまでの距離も書き記した。これで完璧だ!

 ドッカムタイ村への看板は、私の意に反して簡単に発見できた。今日はついているぞ!
村に入り民家で温泉の場所を訊いた。すると、
「ここからは川を渡っていくことになるが、橋が壊れていて通れない」
 と言われた。

 村役場の出張所のような所で訊いてみたが、答えは同じだった。要するに、国道まで戻ってンガーオの街へ出てそこから山に入るというものだった。ということは、ここはドッカムタイ村じゃないの。それとも、他にもドッカムタイ村があるのだろうか? 

 国道1号線に戻ってンガーオの街に入った。そこは地元の人たちが集まる市場になっていた。交番でおまわりさんに温泉の場所を訊くと、彼は知らなかった。でも、ソンテオに乗っていた人たちに向かって、
「誰かドッカムタイの温泉を知らないか?」
 と訊いてくれた。親切なおまわりさんだ。すると、おばあちゃんが、
「この道(県道1154号線)を20キロ行ったところにある」
 と答えてくれた。ありがとう、おばあちゃん。

 言われたとおり、県道を走った。途中、道路が大きく陥没している所があった。昨晩の大雨で崩れてしまったのだろう。道路の左側に池があり、その水が増水して道路の下の土を浸食して右側の谷に流れたのだ。雨期の北タイではよくあることだ。昼間だからすぐに発見できたが、夜だったら穴に落ちていただろう。危ない、危ない。なんとか、左側ぎりぎりをゆっくりと通り抜けたが、帰りは道がないかもしれない。

 道は少しずつ登り坂になっていて、まっすぐ走って行くとやがてゲートに突き当たった。国立公園のようだが、入園料は請求されなかった。職員に、
「温泉はどこですか?」
 と訊くと、
「ここから2キロ」
 と言われた。

 距離計を見ながら山道をゆっくり登って行った。が、2キロを過ぎてもそれらしき看板も温泉への入り口も見当たらない。そのうちに、となり村への入り口に差し掛かってしまった。一体どこにあるんだ! 

 時計の針は11時を回っていた。昨日に引き続き半日仕事になってしまった。しかも、未だ発見できず。あぁ、もう断念するか。

とその時、後方からバイクが近づいて来た。            つづく

2008年8月30日土曜日

タイ秘湯ツアー第3弾 その8







プレー県の2つの温泉


 ワット・サレン温泉があるプレー県ローン郡にはもうひとつ温泉がある。ワット・サレンの管理人が知っているだろうと思い、訊いてみた。彼はタイ語で行き方を書いてくれたが、地図を描くことはできなかった。昔ながらのタイ人なのだろう、仕方がない。

 お寺で作業をしていた僧侶に地図を描いてもらった。彼は英語で説明をしてくれた。なかなか博学な僧侶である。それにしても、僧侶が土木作業をするなんて聞いたことないけど。

 その地図を頼りに、何とかローン郡のメールムー11という村まで辿り着いた。通りすがりの村人に訊くと、温泉は河原にあるが今は雨期で増水しているため見ることができないらしい。とにかく、現場へ行って確かめなければならない。

 コンクリートの立派な橋の上に車を止めて、河原にある温泉を探した。川にはコーヒー牛乳のような泥水が溢れていて、どこにも湯煙は見えない。河原を見渡すと、足跡がある泥地が目に入った。あの辺りだろうか? これは、乾期にもう一度来るしかないなぁ。

 プレー県にはもうひとつ未確認の温泉がある。それは、以前訪れたことがあるメージョーク温泉(拙書でも紹介済み)の近くにあるバンチェン温泉である。近くといってもそれは65万分の1の地図上でのことで、バンチェン村のバンチェン温泉ということしか手がかりはない。

 メージョーク温泉を通り過ぎて、何とかバンチェン村へ入った。村人たちに温泉の場所を訊ねたが、正確な解答は得られない。さて、どうしたものか?

 ゆっくりと田舎道を走っていると、野原の沼で子供たちが釣りをしていた。何だかこの辺りが臭いぞ。私は長年の勘でそう思った。
「この近くに温泉はある?」
 子供たちは首をかしげている。私のタイ語の発音が悪いのか。
「温泉だよ。熱いお湯が出る、お・ん・せ・ん」
 タイ語でゆっくりと、ボー・ナム・プッ・ローンと何度も発音した。すると、少女が、
「うん、あるある、あそこ」
 と、湿地の奥を湯に指した。ビンゴ!

 湿地の中を歩いて行くと、ドカンがあり温泉が湧いていた。早速、水温を計ろうとしたら水温計が割れていた。ダメだこりゃ。

 チェンマイ大学の調べでは53度、手を入れるとかなり熱い。これでは入浴は無理だ。でも、未確認温泉を発見できてよかった。満足。満足。

 午後4時半、バンチェン温泉を後にして、途中メージョーク温泉を見学する。今日の予定では、もう1ヵ所ランパーン県の温泉を見てチェンライ県のメーカチャンで泊まるはずだったが、またしても制限時間切れ。仕方なく、昨晩宿泊したランパーン市内のホテルへ戻ることになった。

 夕飯はムーガタ(韓国風焼肉)の食べ放題の店へ行き、肉をいっぱい食べて英気を養い明日の秘湯探しに備えた。

2008年8月29日金曜日

タイ秘湯ツアー第3弾 その7







やっと入浴 ワット・サレン温泉

 ランパーン県スーンガム郡の河原にある通称・湯河原温泉を探し出すのに、半日もかかってしまった。またしても時間オーバーだ、なかなか思うようにはいかない。昼食を食べてとなりのプレー県にあるワット・サレン温泉へ向かった。

 この温泉についてはCHAOが先に取材しており、地図も載っていたので比較的簡単に辿り着くことができた。ワット・サレンとはサレン寺という意味だが、お寺の中に温泉が湧いているわけではない。近くにサレン寺があり、この地区一帯の呼び名がそうなっているようだ。

 源泉は、コンクリートで固められた人工的なすり鉢状の庭園にあった。何故か洞窟もあり、作者のコンセプトがイマイチ分からない変わった場所である。温泉は硫黄泉で、源泉の温度は59度と結構熱い。庭園の上手には個室風呂のバンガローが5棟建っている。ここで入浴ができる。

 誰かいないかと探してが、管理人室は鍵がかかっていた。どうしたのだろう、今日はお休みか? 8月17日は日曜日で、温泉が休みのはずはない。管理人らしき人を探したがどこにもいない。仕方なく、近くにあるサレン寺へ出向いた。

「温泉に入りたいのですが」
 そうおばさんに話すと、管理人に電話をかけてくれた。
「すぐに来ますから待っていてください」

 温泉に戻って待っていると、草刈機を担いだオヤジがバイクに乗ってやって来た。
「温泉に入りたいのですが。3人です」
 そう言うと、バンガローの鍵を開けた。中には、北タイおなじみのタイル張り円筒形の2段風呂があった。オヤジさんはお湯と水を出して、浴槽を洗い出した。掃除が終わると浴槽にお湯を溜めた。10分ほどで一杯になり、3人で入浴した。入浴料は1人30バーツ。

 8月15日にチェンマイのサンカンペーン温泉で入浴して以来、2日ぶりの入浴である。サンカンペーンは以前も立ち寄っている。ツアー初参加のMさんのために訪れた訳で、今回の秘湯ツアーでは、初めての温泉入浴となった。

 円筒形2段風呂はいつものものより少し浅く造られているが、2日ぶりの入浴に3人も満足そうだった。今日も含めて今まで苦労をしてきたが、温泉に入っていたら疲れもすっ飛んでしまった。これだから、秘湯探しはやめられない。

 さぁ、次はどこの温泉だ。確か、この近くにもう一つ温泉があったはずだが。そうだ、管理人のオヤジさんに訊いてみよう。

2008年8月28日木曜日

タイ秘湯ツアー第3弾 その6







遠すぎた湯河原温泉


 新温泉探しの初日は苦労の連続で、厳しいスタートとなった。今さらぼやいても仕方がないが、誰にも知られていない秘湯を探し当てるということはなかなか大変なことだ。2日目の今日は、昨日回れなかった温泉と予定の5ヵ所を探し当てて、チェンライ県のメーカチャンまで行かなければならない。

 朝7時36分、ランプーンのホテルを出発して、国道1号線を南下して県道1274号線に入った。スーンガム郡ボーナムローン村への道を訊いて右折し、12キロほど走った。ガソリンスタンドで給油をしながら、ボーナムローン村への道を訊ねた。すると、責任者らしき男が地図を描いてくれた。一昔前は、タイ人は地図の見方も分からず、まして描く事など不可能と思われていたが、最近は地図を描けるようになったようだ。

 その地図には、ガソリンスタンドから34キロ地点に温泉があると記されている。地図に従って走っていったが、途中で分からなくなった。村人たちに訊いても、みんな違ったことを言い出して、どれが本当か分からない。OH、GIVE ME A TRUTH! 同じ道を行ったり来たりしているうちに、刻々と時間は過ぎてゆく。あぁ、どうしたものか?

 ある集落で道を訊ねていたら、荷台一杯に炭を積んだトラックが通りかかった。一目見て炭の行商だと確信した。行商ならこの辺の地理に詳しいはずだ。トラックを止めて、助手席のおやじさんに温泉の場所を訊ねた。すると、ペラペラと喋り出した。ところが、早口で意味が分からない。

「地図を描いてくれませんか?」
 そうお願いしたが、彼は地図が描けないようだった。その時、運転をしていた娘らしき女性がおやじさんの話すことを地図に表してくれた。
「ありがとう」と手を合わせた。親切な父娘であった。

 地図に従って走る。途中、右折ポイントが間違っていたが何とかクリアした。もうそろそろ目的地の20キロ地点だなと思い、お寺の集会所で作業をしていたおばさんに訊いた。
「温泉はこの先の川から湧いているよ」

 やったぁ、これだ!
 数百メートル走ると、大きな橋に辿り着いた。時刻は11時、3時間半もかかってしまった。これじゃ、今日の予定は消化できそうにないな。

 橋の手前でゴマを干していたおじいさんが、親切にも案内をしてくれた。河原に下りると水牛がたくさん草を食べていた。食事をすれば当然糞も出る。そう、河原は牛の糞だらけだった。

 橋の真下にドカンがあり、熱い温泉湯が湧いていた。その他にもいくつかのドカンがある。そして、ドカンだけではなく至る所から温泉が湧き出ていた。これはスゴイぞ、まるで湯河原温泉だ!

 源泉の温度は76度とかなり熱い。河原をスコップで掘って、水とお湯が混じって丁度いい温度にすれば入浴は可能だ。もしくは、ドカンを設置してそこにお湯と水を流し込めばドカン風呂になる。

 残念ながらスコップは持参しなかったので、入浴はできなかった。が、いい温泉を発見できて満足である。次回は、スコップとテントを持って河原でキャンプでもするか。

2008年8月27日水曜日

タイ秘湯ツアー第3弾 その5







民家の裏山にある温泉


 ランパーン県ハーンチャット郡へ行き、メータンノイ村を探しながら車を走らせた。山の中の一本道をどこまでも行くと小さな集落があり、道路にテーブルを並べてパーティーをしていた。結婚式かそれとも誰かの誕生日か?

 そこの村人に、ポーンメン温泉の場所を訊ねると、
「メータンノイ駅の近くだよ」
 という回答が返ってきた。

 来た道を引き返して線路のそばに車を止め、線路を渡って駅まで歩いた。駅舎に座っていたおばあちゃんに、
「ポーンメン温泉はどこですか?」
 と訊くと、山の方を指差した。

 車に乗って線路を渡り、おばあちゃんが指差した方向へ走ると、高床式の民家があった。土間で上半身裸で昼寝をしていたお兄ちゃんに温泉のことを訊くと、彼は赤いTシャツを着て歩き出した。どうやら道案内をしてくれるようだ。

彼は、民家の庭を通り抜けて裏山に入って行った。われわれも彼の後を付いて山道を歩く。山道と言っても草がぼうぼうと生えている様な獣道ではなく、木々の間を通るしっかりとした道だった。

5分ほど歩くと小川があり、そこから温泉が湧いていた。仄かに硫黄の臭いがして、手を入れると温かい。温度を計ると表面の水温は32~3度、土の中に温度計を入れると37度だった。これは間違いなく温泉であるが、湯量も少なく池もないので入浴はできない。でも、ポンプのみの温泉と謎の未確認温泉の後だから、何となく満足だった。

帰り道にMさんは、赤い花を見つけて写真を撮っていた。それは、生姜の一種でクルクマという品種。日本には野生種がない、珍しい花らしい。私には何だかよく分からないけど、珍しいということで、とりあえずカメラに収めた。

ハーンチャット郡にはもう一つ温泉がある。ある集落でファリアン村の温泉の場所を訊ねた。そこへ行くには、車を止めてから2キロほど山の中を歩かなければならないと言われた。時刻は午後4時を回っていた。これから温泉への入り口を探して、ガイドを雇って2キロも歩くのは困難だ。多分、明るいうちに見つからないだろう。みんなと協議の結果、断念することになった。今日の予定では、スーンガム郡の温泉へも行くつもりだったが明日に行くことにした。やはり、1日で5ヵ所も回るのは難しい。

ランパーンの街へ行き、1泊450バーツの安ホテルに投宿した。夕飯は、高級リゾートホテルのガーデンレストランで優雅にタイ料理を食べた。同じ料理でも、安食堂の料理とは一味違う。いい雰囲気で食事をしていたら雨が降ってきたので、室内に入りタイ古典音楽の生演奏を聴きながら楽しいひと時を過ごした。

今日は、初日からハードな1日になりあまり成果もなかった。温泉入浴もできなかった。おまけに、1ヵ所は明日に繰越になった。明日はいつもより30分早めに出発して、6ヵ所の温泉を探すぞ!!!

2008年8月26日火曜日

タイ秘湯ツアー第3弾 その4







謎につつまれた温泉

 田んぼの中のポンプ温泉を9時40分に出発して、次はメーター郡ターカー村へ向かった。国道11号線沿いにある土産物村に立ち寄ってタイ語で書いた温泉名を見せたが、誰も知らなかった。あまり温泉に興味がないのだろうか?

 次に、国道沿いの民家で訊ねたら、親切に地図を描いてくれた。
「この先のガソリンスタンドをUターンして、警察を左折するんだ」

 言われたとおりに走って行ったが途中で不安になり、警察でおまわりさんに左折ポイントを訊いた。普段、警官にはいいイメージを持っていない。特に、ハイウェイパトロールのおまわりは、人の弱みに付け込んですぐに賄賂を要求するからだ。ところが、田舎のおまわりさんは親切丁寧に道を教えてくれた。おまわりも悪い人ばかりじゃないんだなぁ。

 道に迷いながらターカー村を目指して走って行った。もちろん、途中で何度も道を訊ねながらである。やっと核心に迫ってきたところで行き過ぎてしまい、畑を通って山を登るととなり村に出てしまった。

「一体どこにあるんだ! さっきの農夫は山の上だと言ったのに」

 クソ! だんだん腹が立ってきた。それは、道を教えてくれたタイ人に対してではなく、タイ語が未熟な自分自身に対してである。

 再び山を下りて、果樹園で農作業をしている男に訊ねた。すると、山を登ってそのまま曲がらずに赤土の道をまっすぐに行けと言った。そうか、分かったぞ! 車がやっと一台は入れそうな獣道を行くんだ。

 気を取り直して山を登り、行き止まりかと思われた未舗装の山道へ入って行った、幸い雨は降っていなかったので道は乾いていた。これなら走れる。赤土の凸凹道をどこまでも行くと、ゲートに突き当たった。何だろう? 国立公園にしてはみすぼらしいが。

 ゲートの先には砂利が積まれていて、遠くの山肌は切り崩されている。そうか、ここは採石場だ。見張り番のおばさんに温泉のことを訊くと、この中にあると言う。見学したいと話すと、携帯電話で誰かに電話をかけた。
 マネージャーに電話をしたが通じない様子。
「この先に事務所があるから、そこでマネージャーに許可をもらって」
 とおばさん。

 ゲートをくぐって採石場の中に入ると、事務所兼従業員宿舎があった。そこには、口ひげがある色黒・強面のオヤジが立っていた。
「温泉を見学したいのですが」
 率直に言うと、
「今、発破をかけているのでダメだ。午後1時に来れば案内してやる」
 そう言われたので、また来ますと言って立ち去った。

 まだ11時半だけど昼飯にするか。麓の掘っ立て小屋のような食堂でチャーハンを食べ、インスタントのコーヒーを飲んで時間をつぶした。

 1時5分前にゲートに行くと、さっきのマネージャーがやって来て、
「見学はダメだ」
 と言った。

 だったら、最初からそう言えよ。こっちは忙しいのに1時間半も時間をつぶしたんだぞ。この嘘つき野郎!

 結局、ランプーン県メーター郡ターカー村のムアンテーニティ温泉を見ることはできなかった。外部の人に見せないとは、金鉱でもあるのだろうか? それとも、大麻を栽培して麻薬を作っているとか? 謎は深まるばかりだった。

2008年8月25日月曜日

タイ秘湯ツアー第3弾 その3







田んぼのポンプ温泉

 最初に探す温泉は、ランプーン県ランプーン市内にあると書かれている。市内ならすぐに見つかるだろうと思い、ゲストハウスのオーナーや居酒屋どんきの従業員に聞き込み調査をしたが、誰も知らなかった。チェンマイにある大型書店・スリウォン書店でランプーン県の地図を探したが売り切れだった。この温泉に関しては、事前に何の手がかりもない。これじゃ、初めから苦戦になりそうだ。

 さて、どこから調べようか? 市内というのだから駅へ行ってみよう。早速、ランプーン駅へ行き、休憩をしていた駅員に訊ねた。
「ノーンロム温泉を知っていますか?」
「知らないなぁ、ランプーン市内には温泉なんかないよ」
 そうはっきりと言われてしまった。 ショック!

 でも、すぐにはあきらめない。今までの経験からタイ人の話は50%くらいしか信用できない。数人に訊かないと真実は出てこないのである。

 駅を後にして線路沿いに走ると、建設中の小さなお寺が見えた。その敷地に入って、建物の中にいた女性に訊いてみた。すると、温泉はあると言う。彼女は、ノーンロム村への地図を描いてくれた。大雑把な地図だが、何の手がかりもないわれらにとっては有難い。近くに行ったらまた地元の人に訊けばいい。
「ありがとう」
 と手を合わせて、お寺を後にした。

 地図に従い国道11号線に出て、カオチャンボーン村を左折した。その先がノーンロム村である。しかし、どれくらい距離があるのか分からない。途中で何回か村人に道を訊いて何とかノーンロム村に辿り着いた。チェンマイから1時間以上かかった。

 村に入ったところまではいいが、温泉の場所が分からない。車で行ったり来たりしていると、農作業をしていた男性が見るに見かねてバイクで案内をしてくれた。着いた所は田んぼの中で、車を止めて100メーターほど歩くとポンプがあり、温泉湯を汲み上げて田んぼに流していた。これがやっと探し当てたノーンロム温泉か! やれやれ。

 ポンプだけだから当然入浴などできる訳がない。苦労した割には、厳しいスタートとなった。しかし、これが秘湯探しの醍醐味である。何が出るか分からない。入浴可能なすばらしい温泉もあれば、ポンプだけ、源泉だけの温泉もある。とりあえず写真を写して温泉を後にした。

 さぁ、次はどんな秘湯が待っているのだろうか? 気を取り直して出発!

2008年8月23日土曜日

タイ秘湯ツアー第3弾 その2







超有名サンカンペーン温泉

 8月15日、今日は終戦記念日だ。戦没者に手を合わせ黙祷。
 9:45に夜行列車でチェンマイに着いた。寝台車は快適であったが、長袖シャツを忘れてしまいタオルケット一枚では寒かった。今日はチェンマイに宿泊する予定で温泉探しには出掛けないが、初参加のMさんのためにチェンマイで一番有名なサンカンペーン温泉へ案内することになった。

 駅からソンテオに乗り、ナイトバザールの食堂街・アヌサーンマーケットの裏にあるランナータイ・ゲストハウスへ向かう。このゲストハウスは居酒屋どんきやランベル旅行代理店にも近く便利がいい。料金は一部屋350バーツ(エアコン付きは480バーツ)。チェンマイの夜は涼しいので扇風機で十分である。3部屋を取ってチェックイン。

 昼食はいつも使っている居酒屋どんきでカツ煮定食を食べる。食後はランベルツアーでトヨタ・ヴィオスを借りてサンカンペーンへ向かった。

 県道1006号線を走っているとMさんが、
「あっ、あれはキューリ畑や」
 と叫んだ。
「日本のキューリですか?」
「そうや」

 Mさんはかつて農業関係の仕事をしていたので、草木、花、農作物には詳しい。
「帰りに寄って新鮮なキューリをもらおう」
 そんな勝手なことを言っていた。

 サンカンペーン温泉は、私営のリゾート、ルン・アルン温泉と公営のサンカンペーン温泉とに分かれている。以前来た時には、ルン・アルンに入浴してのぼせてしまいサンカンペーンは足湯だけ入浴はしていない。今回は時間があるので、入浴することにした。

 入園料は40バーツ、2年前は確か15バーツだった。石油が上がると何でも高くなってしまう。ちなみにタイ人は半額の20バーツで、タイ人価格にしてもらうように値段の交渉をしたが駄目だった。

 この温泉は、間欠泉が勢いよく噴き出ている。湯量も多く源泉の温度も99度とかなり熱い。温泉タマゴも簡単にできてしまうほどだ。温泉タマゴは後にして、とりあえず入浴。

 個人風呂は1人30バーツの料金がかかる。ちなみにプールは50バーツ。かつては、木造の湯船があったのだが、壊れやすいのかコンクリートに木の湯船を埋め込んだものに変わっていた。そこに熱湯と水を流し込むのだが、お湯が熱すぎて入れない。お湯の蛇口を止めて水だけを流し、やっと入浴できる温度にした。

 温泉湯は硫黄泉で、お肌がつるつるになる。そして、身体の芯まで暖まる。山形県の蔵王温泉に良く似ている。10分ほどで出てきたが、汗がなかなか止まらなかった。ああ、いい湯だなぁ。

 帰りに先ほどのキューリ畑に立ち寄った。誰もいないので勝手に畑に入ってみると、黄色い花の根元に3センチほどの可愛いキューリが実っていた。
「まだ食べられないですね」
「そうやなぁ」

 これで今日の予定は終了した。その晩は、居酒屋どんきで日本食を食べながら一杯のんだ。山に入ったらタイ料理しか食べられない。和食の食いだめである。

 さぁ、明日から新しい温泉を探すぞ!

2008年8月22日金曜日

タイ秘湯ツアー第3弾 その1 再び北タイへ

カンチャナブリ、ガンペンペット・タークに続くタイ秘湯ツアー第3弾は、パタヤの温泉奉行・新井お風呂の守との協議の結果、再び北タイへ行くことになった。拙書においても43ヵ所ほどの北タイ温泉を紹介しているが、チェンマイ大学の調査によるとまだ20以上の温泉がある。今回のツアーでは、ランプーン、ランパーン、プレー、チェンマイ県にある16ヵ所を4日間で回る計画を立てた。
 
 かつては、CHAO(ちょっとディープな北タイ情報誌)の資料を基にして1日平均3ヵ所の温泉を探し当てるのが精一杯であった。ところが、今回は県、郡、村と温泉名だけの手がかりで1日平均4ヵ所を探すというかなり無謀なツアーである。

 雨期の北タイは大雨による河川の氾濫や増水で、がけ崩れ土砂崩れの恐れがある。2年前は、チェンマイを中心に甚大なる被害が出た。だが、欲張りな私はいつも殺人的なプランを立ててしまう。果たして、4日間で16ヵ所の温泉を探し当てることができるだろうか?

 8月14日午後7時、バンコク・フォアランポーン駅に参加者3名が集合した。ツアー初参加のMさんのリクエストで、夜行寝台列車でチェンマイへ行くことになった。新井さんも私もバンコクで用事があったため、別々にパタヤを出発して駅に集合した訳だ。

 列車は7時35分発、ホームにはもう列車が入線していたが、それは6時発のチェンマイ行きだった。すでに1時間も遅れているが、こんなことは良くあることだ。スタートから幸先が悪いけど、仕方なく蒸し暑いホームで缶ビールを飲んで待っていると、となりのホームに列車が入って来た。駅員が「あれが19:35分発の列車だ」と言うと、待っていた乗客は一斉に立ち上がり、となりのホームへ向かって走り出した。

「この列車はどうして発車しないの?」
 そう駅員に訊ねると、
「故障している」
 とひと言。
 と言うことは、われわれはラッキーだった。

 エアコンがガンガンに効いている車両に乗り込み、席に着いた。乗務員が夕食の注文を取りに来たので、ビールと夕食、明日の朝食を頼んだ。やがてビールが運ばれて来て、再び旅の無事を祈って乾杯した。

 8時になると、先発の列車が出発した。2時間遅れである。われわれの列車はその5分後に発車した。ビールを飲み終えると、買ってきたウィスキーを飲み始めた。
「列車の旅はええなぁ!」
 Mさんが呟いた。
「楽しく行きましょう」

 10時に消灯、あっという間に座席が寝台に変わり就寝。

 列車は40分遅れでバンコクを出発したが、チェンマイへは予定通り翌朝9時45分に到着した。

 さぁ、これから北タイ秘湯ツアーが始まるぞ!

2008年8月12日火曜日

どうなるタクシン?

放逐、逃亡、亡命、そして・・・?

天下の偽善者、大悪党のタクシン元タイ首相は、金に物を言わせて罪を逃れようとあの手この手でがんばってきたが、ついに年貢の納め時が来た。女房の禁固3年の実刑判決を受けて身の危険を感じて、家族でイギリスへ夜逃げをしたのである。

 低所得層のタイ人に言わせると、タクシンは神様のような人らしい。ただし、中間所得者層、富裕層からはとことん嫌われている。政治家を買収して政党を作り、法律を変えて悪行三昧。最後は司法介入まで試みたが、無念の失脚となった。

 今までは、金を出せば何とでもなる国であったが、タイも民主主義がやっと定着してきたようだ。悪は滅びて正義は勝つ、これはすばらしいことである。

 資産700億バーツと女房と義兄、秘書の3人の保釈金1500万バーツは没収されることになる。裁判所がタクシン夫妻の逃亡をお膳立てしたという見方もあるが、タイ政府が英国との協定により身柄引き渡しを求めることもできる。さぁ、どうなるタクシン?

 今後は、タイ政府の方針次第でタクシン一族の運命が決まる。もし、タイ政府が亡命を認めて英国政府が受け入れたとしても、英国の田舎で静かにサッカー観戦を楽しむ老後を送るしかないだろう。

2008年8月9日土曜日

タイ秘湯ツアー第3弾のお知らせ

 6月20日にパタヤに戻って以来、カンチャナブリ県(6月29日~7月2日)、ガンペンペット・ターク県(7月25日~28日)の2回の秘湯ツアーを開催した。双方ともに6ヵ所の温泉を巡って来た。今年は10月~11月の間留守にするので、もう温泉はいかれないと思っていたら、温泉奉行のAさんが8月にもう一度行こうと誘ってきた。

 北タイ方面はAさんと2人で44ヵ所を回ったが、まだまだたくさん残っている。今回は、ランプーン県、ランパーン県、プレー県を中心に15ヵ所の新温泉を探しに出掛ける。中には、チェンマイ大学も調べていない温泉も含まれている。果たして、探し当てることができるだろうか?

 期間は、8月14日から20日。チェンマイまでは夜行寝台列車で行き、現地でレンタカーを借りて走り回る。初参加の方がいるので、サンカンペーン温泉やワット・プラタート・ドイ・ステープ寺院などにも立ち寄ることにした。他にも時間があれば建設中のスパ・リゾートなども見てくる予定である。

 いつものことだが、今回もかなりハードなスケジュールになりそうだ。でも、運転はAさんと一日おきに交代制だから大丈夫だ。戻りましたら、ご報告いたします。では、乞うご期待!

2008年8月8日金曜日

タイ秘湯ツアー第2弾 おまけ

ツアー最終日、時速120キロで国道1号線を南下し、その勢いで高速道路に突入した。幸い渋滞はなく、バンコク市内をすり抜けパタヤへ通じるモーターウェイに入った。あとはパタヤまで一直線だ。

 片側4車線の広い道路の右から2車線目を軽快に走っていたら、はるか向こうに人が立っているのが見えた。大きく手を振って、左側に寄るように合図している。減速して近づくと、警官が数十メートル間隔で3人立っていた。あっ、しまった! ネズミ捕りか?

 スピード違反かと思ったが、制限時速は120キロだからオーバーではない。じゃ、何で捕まったの? これは、KEEP LEFT(左側を走る)違反だった。

 4車線を走る時、通常は左側2車線を走らなければならない。追い越しをした場合は、速やかに左2車線に戻らなければならない。ところが、右2車線をずっと走っていたので、捕まってしまったわけだ。

 車を止めて窓を開けると、サングラスをかけた真っ黒な顔の警官が現れた。
「お前は外国人か?」
「はい」
 と言って、免許証を渡した。
「日本人か、タイ語が判るか?」
「はい、判ります」
「ここはKEEP LEFTの区間だ。オンヌットの警察署で罰金を払ってもらうぞ」
 そう言って、警官は違反切符の束を一冊出した。

 警官に逆らったり余計なことを言うと、どんどん罰金が上がっていくのがこの国のしきたりだ。警官に逆らって、一晩ブタ箱にぶち込まれた友人を知っている。ここは大人しくしていよう。

 警官は、親指と人差し指で違反切符の束をつまみ切符に記入する素振りを見せながら、その下で残りの3本の指を小刻みに動かした。それを見た時、ピンときた。3本ということは、300バーツの意味だ。そう、賄賂である。

 そうか、今日は7月28日、給料日前で警官の懐も底をついている頃だ。400~500バーツの罰金を払うためにバンコクのオンヌットまで戻ると、ガソリン代もかかるし高速代もかかる。それよりも、約束の時間に間に合わなくなってしまう。ここはタイ・スタイルを貫くか。

「OK」と言って、財布から300バーツ取り出して警官に手渡した。何と物分りのいい日本人でしょう。警官は眉毛ひとつ動かさず札を胸のポケットにしまい、免許証を返してくれた。これにて一件落着。

 警官に捕まって動揺していたのか、途中の休憩所のスタンドでガソリンを入れるのを忘れてしまった。だんだん心細くなり、ついにはガソリン計のEランプが点灯した。やばいぞ、これは。

 モーターウェイのバイパスにはスタンドがない。仕方なく、バイパスを出て小さなスタンドへ行きガソリンを補給した。その際に、車体の下を擦ってしまった。やれやれ、最後の最後でとんだ散財だ。この事故も交通違反がなければ起こらなかっただろう。

 幸い、保険で直すことになったが、慰謝料として2500Bを支払うことになった。結局、罰金と慰謝料でひとり700Bの負担となった。くれぐれもKEEP LEFTには気をつけてください。

2008年8月7日木曜日

タイ秘湯ツアー第2弾 その9最終章







田んぼの中の赤湯温泉


 2008年7月10日のCHAO(ちょっとディープな北タイ情報誌)に、温泉の記事が掲載された。先を越されてしまったが、もともとのニュースソースは私が発見したチェンマイ大学の温泉分布表である。多分、温泉博士の山内氏は私の本を見て探し当てたのだろう。その温泉は、田んぼの中に湧き出るファイボーンローン温泉という。

 CHAOによると、温泉の場所が判りにくいため地元の青年に案内してもらったそうだ。青年の写真も載っていた。温泉を探すよりもその青年を探したほうが早そうだ。

 最終日は、メーソットからパタヤまで約650キロの距離を走らなければならない。平均時速80キロとして8時間はかかるだろう。しかも、18:30までに車を返す約束だから、10時にはメーソットを出発しなければ間に合わない。時間との戦いだ。

 いつもより1時間早い7時に出発して、1時間で温泉のある村の雑貨屋にたどり着いた。店主に温泉の場所を訊ねると、親切に地図を描いてくれた。その地図に従って、集落の営林署のような所へ行き、温泉の場所を知っているおじいさんにガイドを頼んだ。

 おじいさんを強引に車に乗せて、山間の農道をゆっくりと走り、田んぼが一面に広がった場所で車を降りた。そこからは、徒歩で行かなければならない。温泉セットを持って、草むらを抜け、田んぼのあぜ道を落ちないように慎重に歩いて行く。田んぼを過ぎて山間の沢の中を歩いて行くと、先頭のおじいさんが私の足を指差して何か言った。足を見ると血が流れていた。何だこれは! ブヨに刺されたか? よく見ると、尺取虫のような動きの黒い虫が足にへばりついている。それは吸血動物の蛭(ひる)であった。

 蛭は私だけではなく、みんなの足に食いついていた。あわてて払いのけると、おじいさんは薬草を傷口につけてくれた。さすが山育ちのおじいさん、ありがとう。

 沢を通り抜けると、次の田んぼが広がっていた。田んぼにはまだ稲が植えられていない。温泉はこの田んぼの脇にあるらしい。30分歩いてやっと温泉が湧き出る池に到着した。池からは鉄分を含んだ赤いお湯が流れ出ている。そこで、赤湯温泉と命名した。そう言えば、山形県にも同じ名前があったなぁ。

 時間がないので、早速着替えてサンダルを履いたまま池に入る。澄んでいた温泉水はたちまち赤く染まった。自然に湧き出ている温泉にしては丁度いい温度である。水温を計ると39度だった。私とAさんは入浴したが、FさんとSさんは遠慮して入らなかった。蛭が恐かったのだろうか?

 これでツアーの予定は終了した。結果は6ヵ所の温泉を探し当てたことになる。私としては満足である。皆さん協力ありがとう。

 時間がないので早足で車に戻った。おじいさんを営林署まで送り、お礼を言って100バーツ渡した。時刻は9時45分、メーソットまでは1時間はかかる。45分の遅れだ。さぁ、ぶっ飛ばすぞ!

 国道105号線を時速120キロで走り、何とか遅れを取り戻した。途中、峠の市場で新鮮なアスパラやブロッコリ、柿などを買って一休み。その後も、時速120キロを守りながら突っ走り、何とか18:00にパタヤに着いた。

 お疲れ様でした。ところが、最後に大どんでん返し・・・。

2008年8月6日水曜日

タイ秘湯ツアー第2弾 その8







温泉よりも命が大事

 ジャングルの川べりにある幻の温泉を断念して、午後1時25分にウンパーンを出発した。帰りも往きと同じく険しい山道をくねくねと走らなければならない。だが、帰りは下りなので往路よりも楽だった。途中、難民キャンプの近くにある峠の茶店でコーヒーを飲み休憩した。今日はメーソットに戻るのが精一杯だろう。

 山を下ると道は平坦になり、時速120キロですっ飛ばした。ほとんど車は走っていないけれど、たまにのんびり走っている車に出会うとあっという間に追い越した。メーソットへ向かって軽快に走っていると、珍しく渋滞に巻き込まれた。何だろう? 

 車を止めて前方を見ると、ピックアップトラックがセンターラインをまたがって斜線を塞いでいる。事故だ! 警察官の誘導によりゆっくりと近づいて行くとトラックの運転席側がめちゃくちゃにつぶれていた。これじゃ運転手は大怪我を負ったか、もしくは即死したかもしれない。

 トラックの左側の草むらには大型トラックが横転していた。積荷のキャベツが散乱している。多分、よそ見か居眠り運転で正面衝突をしたのだろう。楽しい温泉旅行の最中に、悲惨な事故現場に遭遇してしまった。事故は悲惨だったが、散乱したキャベツの前で何もなかったかのように黙々と飛び散ったキャベツを竹の籠に入れているおばさんの姿は滑稽だった。周りに群がる野次馬たちも、心配そうにキャベツを見ていた。まさにチャップリンの悲喜劇の世界で、思わずみんなで笑ってしまった。

 今まで猛スピードで飛ばしていたが、大破したトラックを見たらアクセルを踏む右足に力が入らなくなった。
「ゆっくり行きましょう」
 自分で自分を諭すように言った。

 メーソットの街には5時前に着いたが、もう1ヵ所の温泉は場所が分かりにくいので明日の早朝に出かけることにした。ホテルを探すのも面倒なので、昨晩の妖しいホテルに投宿した。お疲れ様でした。

 最後の晩餐は野菜炒めと焼き鳥じゃ寂しいので、豪華な中華料理店へ出向いた。豚の角煮、青菜炒め、焼きビーフン、魚のすり身のフライ、餃子、アヒルの煮物などを注文して、4人で腹いっぱい食べた。ビール大瓶を3本頼んで、会計は全部で900バーツだった。バンコクだったら2000バーツくらい取られるだろう。やはり、田舎は安いなぁ。

 明日の最終日は、午前中に温泉を探し当ててパタヤへ戻る計画だ。実は、その温泉は山間の田んぼの中にあって歩いていかなければならない。その情報を知っているのは、Aさんと私だけだ。別に悪意はなかったが、Fさん達には内緒にしておいた。行ってからのお楽しみだ。

 

2008年8月5日火曜日

タイ秘湯ツアー第2弾 その7







ウンパーンの幻の温泉

 ターク県ポップラ郡のファイナムナック温泉では、温泉湯をドラム缶に流し込んだ珍しいドラム缶温泉を堪能した。まるで、都会から山奥へ移住して自給自足の生活を楽しんでいる人みたいだった。

 さて、今日の予定はメーソットへ戻りさらに北のメーラマーの温泉を探して終了であるが、昨日断念したウンパーンは気に掛かる。ガンペンペットからの山道は乗用車では不可能だったが、タークの県道はしっかりしている。国境沿いの県は、有事の際に軍用道路になるため特別に国から予算をもらい、いい道路を造っているのではないだろうか? これは私が立てた仮説である。

 Aさんとの協議の結果、途中で舗装道路が途切れたら引き返すという条件で、ウンパーンへ向かって県道1090号線を走ろうということになった。ポップラからウンパーンまでは約120キロだが、険しい山をいくつも越えなければならない。通常の道路なら1時間半くらいで行くことができるが、山道となるとその倍はかかるだろう。大丈夫だろうか?

 山中に入ると道幅は狭くなったが、思っていた通り道路は整備されていた。私の仮説は正しかったことになる。しかし、急な登りと急カーブの連続で運転をしている私も車酔いになるほど辛い道程だった。

 途中、山の斜面に枯葉で葺いた山小屋のような建物が、所狭しと隙間なく建っている場所を発見した。その場所は周りを柵で囲まれている。看板には、「UMPIUM TEMPOLARY SHELTER ARIA」と書かれていた。ここは、ミャンマーから逃げてきたカレン族の難民キャンプで、約2万人が暮らしているそうだ。山小屋の間には仏塔や教会もあった。カレン族にもクリスチャンがいるのには驚いた。

 難民キャンプを後にして、やっと山を下りウンパーンの街にたどり着いた。3時間近く山中を走っていたことになる。昼食を食べながら温泉の情報を収集した。すると、ウンパーンにある2つの温泉は車で行くことはできないらしい。手漕ぎのゴムボートで川を下っていかなければならないそうだ。ディズニーランドのジャングルクルーズのような旅だ、これには参った!

 川沿いには洞窟や滝などがあり、旅行代理店がアドベンチャー・ツアーを企画している。ボートだけ借りると2500バーツだが、多分ガイドを付けないとたどり着けないだろう。
チェンマイ大学の調査表には水温が0度になっている。0度ということはありえないから、実際に計っていないのだと思う。時間的にも無理なので、残念だけど今回はあきらめることにした。

 後ろ髪を引かれながら、メーソットに向かい険しい山に入って行った。

 いつの日か、ライフジャケットと折りたたみ式のカヌーを携えてチャレンジしたい。

2008年8月4日月曜日

タイ秘湯ツアー第2弾 その6







ドラム缶温泉


 昨日は、ターク県のメーカーサー温泉を見学した後、メーソットの妖しげなホテルに宿泊した。1部屋450バーツのちゃんとしたホテルなのだが、どうして妖しげかと言うとボーイが盛んに女性を斡旋してくるからだ。私の顔を見ると「レディ レディ」と声をかけてくる。よほどスケベに見えたのだろうか?

 夕食は洋風のレストランでピザ、スパゲティー、サンドイッチを食べた。毎日タイ料理では飽きてしまうから、たまには洋食を食べるのもいいだろう。その晩は、ボーイの誘いを振り切って? おとなしく眠った。

 ツアー3日目は、まずターク県南部のポップラ郡の温泉へ行き、そこから北上してメーラマー郡の秘湯を探す計画を立てた。ウンパーン行きを断念したので行程に余裕ができた。そこで、せっかく国境の街に来たのでボーダーを見学することにした。

 朝7時半にホテルを出発して、ボーダーへ行った。そこには、タイとミャンマーを結ぶ立派なコンクリートの橋が架かっていて、その橋の下にあるレストランで朝食を食べた。川の手前には、バズーガ砲のような武器を搭載した装甲車が止まっている。有事の際には出動するのだろうか? ただ、かなり老朽化しているので弾が出るかどうかは不明である。
タダの脅かしだったりして、タイだからありえないことはない。

 朝食を終えて8時20分に出発。県道1090号線を南下してポップラを目指す。とてもいい道路である。
「これならウンパーンまで行けるかも」
 Aさんがそう言った。
「行ける所まで行ってみますか」

 ポップラの街に入り、すぐに温泉の場所を訊ねた。早めに訊かないと通り過ぎてしまうことが多いからだ。すると、すぐ近くにあった。これはラッキーだ!

 山の斜面にある森林公園に入ると、水牛が何頭か草を食べていた。小高い丘の上から湯煙が見えた。ここがファイナムナック温泉である。

 建物から人が出てきたので、
「個室風呂はありますか?」
 と訊ねた。
「ないよ」
 と彼は言った。
「シャワーはある?」
 と訊くと、
「ここにあるよ」
 そう言って、建物の横を指差した。
 そこにはトタン板が立てかけてあり、奥にはドラム缶が2つ並んでいた。これがかけ湯なのか?
 手を入れてみると丁度いい温度で、もうひとつのドラム缶は少し熱かった。
「ここに入ってもいい?」
「いいよ」

 ここまで来たら入るしかないだろう。すぐに着替えてサンダルを履いたままドラム缶に入った。ドラム缶に入るのは初めての体験である。テレビ番組で、都会から山奥に移り住んで自給自足の生活をしている人が、ドラム缶にお湯を入れて入浴しているシーンを見たことがある。楽しそうに入っているが、実際はかなり狭く身体の大きい人は足を曲げられない。私も足を曲げることができず、下半身しか浸かる事ができなかった。これじゃ、半身浴だ。

 入浴したのは私だけで、あとの3人は入らなかった。それでも私は大満足だった。源泉は丘の上ともう1ヵ所あり、溶岩の穴の中から湧き出ていた。大昔に火山の噴火があったのだろうか? 

 さて、最後の温泉へ行くか。

2008年8月3日日曜日

タイ秘湯ツアー第2弾 その5







ターク県のメーカーサー温泉


 ガンペンペット県クローンラーン郡にはもうひとつの温泉があるとチェンマイ大学の調査表には書いてあったが、地元の人に聞いても誰も判らなかった。これは諦めるしかないか。

 クローンラーンからターク県へ抜ける県道が地図には記されている。ところが、その道は赤土の未舗装道路で、雨期の最中に車高の低い乗用車で走るのは無謀である。かつて、スズキの小型四駆で泥のクレバスにハマッて遭難したことがあるから、雨期の未舗装道路にはかなりナーバスになっている。

 昼食を食べながらAさんと協議した結果、このルートはやめにして国道1号線まで戻りターク市内から国道105号線でミャンマーとの国境の街メーソットへ向かった。国道を走るのはまったく問題がない。遠回りのようだが、危ない山道を走るより早いし安全だ。

 メーソットに着いたのは午後3時、市内に古くからある有名な温泉があるのでホテルを探す前に立ち寄ることにした。国道105号線を北上して30分ほど走るとメーカーサー温泉にたどり着く。ここは地元では有名な温泉公園で歴史もあるようだ。

 公園内には土産物店やレストランが建ち並んでいる。中央には源泉が湧き出ていて、水温は75度もある。源泉のそばにはプールが造られているが、お湯はなく現在は使われていないようだ。その周りにはタイル張り円筒形の浴槽がある個室風呂が建っているが、管理が行き届いていないせいか汚れたままでとても使用できる状態ではなかった。どうしたのだろう?

 タイ人は滝や洞窟は涼しいので好むが、温泉はあまり好きではない。国や県から補助を受けて入浴施設を造っても、お客が来ないとろくな管理もせずに放置してしまう。だから、配水管が詰まったり汚れ放題になってしまうのだろう。残念なことである。

 公園の奥を散策していると、温泉プールが2つあった。大人用と子供用に分かれている。入浴料は1人10バーツと安いが、温度を計ったら36度だった。タイ人向けの温泉で、日本人にはぬる過ぎるかもしれない。プールの脇には宿泊ができる個室風呂も建てられていた。旧施設が老朽化したので新しく造ったのであろう。

 飛行場もある国境の街メーソットから30分ほどの場所にすばらしい温泉が湧いているのに、管理をしないで放ったらかしにしている。われら温泉ファンにしては、誠に残念なことである。

 今年3月に発表になったタイ工業省による温泉の観光地化プロジェクトでは、まず北タイの温泉から始めると書かれていた。北タイも大切だが、このような立派な温泉と入浴施設があって放置されてしまっているところの活性化も同時に行うべきだと思う。

 ターク県のメーソットなんて、日本人にはほとんど知られていない場所だが、すばらしい温泉リゾートがあれば訪れる観光客も増えることだろう。今後のタイ工業省とTAT(タイ政府観光庁)の活躍を期待したい。

 

2008年8月2日土曜日

タイ秘湯ツアー第2弾 その4







クローンラーン郡の秘湯


 ガンペンペット市内のプラローン温泉公園を後にして、フロントの女性が描いてくれた地図を頼りにクローンラーン郡へ向かった。時計台から40キロと書いてある。なかなか正確な地図だ。
 
 県道1116号線を走りクローンラーンの街に入る。小さな食堂で温泉の場所を訊ねたら、店の少し先にある道を右折しろと言われた。そこは、クローンラーン国立公園の入り口だった。この中に温泉が湧いているのだろうか?

 ゲートで職員の青年に、
「ここに温泉はありますか?」
 と訊くと、
「はい、あります」
 と言われたので、入場料1人40バーツ、駐車料金30バーツの合計190バーツを支払って中に入った。

 森の中を走り抜けてたどり着いた所は川沿いの施設で、そこにいた女性に温泉のことを訊ねた。彼女が話すには、ひと山越えた辺りにあるようだ。
「ちょっと待って」
 そう言って、彼女は建物の裏側へ入って行った。
 5分ほどすると、バイクに乗った父娘がやって来た。どうやら、彼らが温泉の場所まで案内してくれるらしい。バイクの後をついて走って行くと、公園を出てしまった。どうなっているの?

 バイクは県道から脇道に入り、畑の中を走って行く。そして、川に突き当たった。川には今にも壊れそうな木造の橋が架かっている。橋の上には車用の板がレールのように敷かれていた。その上にうまくタイヤを乗せてゆっくりと車を進めた。

 橋を渡ると小さな集落があった。バイクは集落の細い道をぐるぐる走り、あるお寺に入った。このお寺に温泉が湧いているのだろうか? 

 父がバイクを降りて辺りを探したが、温泉らしきものはどこにもない。娘に何か言われている。どうやら、違うお寺に来てしまったようだ。バイクに乗り、こんどは娘の案内で別のお寺の門をくぐった。そこには池があり、池の端のほうにコンクリートの丸い井戸があった。

 車を止めて草むらを歩いて行くと、井戸の中にレンガの囲いがあって、そこから生ぬるいお湯が湧いていた。これじゃ、入ることもできない。その横にもうひとつ井戸があり、
温度を計ると38度だった。これなら温泉としてはOKだが、狭い井戸に入ることもできず、写真だけ写した。ここがソムナックソン寺の温泉である。

 2ヵ所目までは良かったが、3ヵ所目の温泉でズッコケてしまった。まぁ、秘湯といえば秘湯だけど。チェンマイ大学が調査した資料は、温泉施設ではなく地下水研究のためのものだから仕方がない。というより、国立公園の職員に腹が立つ。温泉なんかないじゃないか嘘つきヤロウ、金返せ!

気を取り直して県道まで戻り、父娘にはお礼を言って100バーツの案内料を渡した。

 さぁ、昼食を食べて仕切り直しだ! 
 

2008年8月1日金曜日

タイ秘湯ツアー第2弾 その3







プラローン温泉


 夜中にトイレに行きたくなり、目が覚めた。時計を見ると午前4時だ。用を足して再びベッドに入ったが、「ガタン ガタン」という物音が断続的に聞こえてきて、気になって眠れない。そのまま、うとうとして朝を迎えた。少し早いが6時に起きてシャワーを浴び、荷物をまとめてチェックアウトした。

 昨晩、歌を唄った1階のカラオケがレストランに変わって、そこでカオトム(お粥)とコーヒーの朝食を食べた。やがて、みんなも現れて食事を食べて、予定通り8時に出発した。

 フロントの女性に描いて貰った地図によると、市内にあるプラローン温泉は分かりやすい場所にある。時計台から川沿いの道を23キロ走り、目印を右折して500メートルとなっている。これならすぐに分かるだろう。そう思って、時速100キロで飛ばしていたら右折ポイントを通り越してしまった。途中で道を訊ねて、やっと右折の場所を発見して曲がったが、500メートル走っても何も現れない。おかしいぞ! 結果的には、500メートルは5キロの間違いだった。やっぱりタイ人だ。

 道路の左側には立派な柱が建っていて、そこを通って入って行くと駐車場があり、奥に温泉公園のゲートがあった。何となく昨日のウタイタニのサモトン温泉と感じが似ている。公園内は綺麗に整備されていて、建物の造りもまだ新しい。

 受付のある建物で、男性の職員に入浴料を訊ねた。料金は1人30バーツで個室風呂が50バーツ、4人で入ると170バーツだった。早速料金を払い、係りの女性に浴槽にお湯を入れてもらった。

 浴槽は北タイによくある、タイル張り円筒形の2段風呂だがかなり大きい。10人は入れそうな浴槽である。お湯が一杯になるまで10分ほどかかると言われたので、その間に源泉を見学に行った。

 源泉の温度を計ったら51度あったが、チェンマイ大学の調査によると54度になっている。源泉は他にもあるのだろうか? そこから流れるお湯で足湯場が造られている。半円形のプールにパラソルと板の座席があり、そこに腰掛けて足をプール浸すようになっている。今までに見てきた中で、一番高級な足湯場である。風情があってなかなかいい感じである。

 浴槽にお湯が溜まったので、水着に着替えて入浴する。温度は40・5度、これならOK、日本人向けの温度だ。お湯は透明で無臭の単純泉。4人ならばゆっくりくつろげる広さである。個室風呂は7部屋あり、トイレ、マッサージ、喫茶室などもある。公園の隣の敷地にはログハウス風のコテージが建設中であった。来年にはオープンするらしい。

 昨日の温泉に続いて、いい雰囲気の温泉である。二つとも秘湯という感じではないが、大勢の仲間と来ても十分楽しめる温泉公園だ。コテージが完成したらぜひ再来したい。

 さて、次の温泉は。2日目はハードスケジュールだから先を急がないと。