2008年6月26日木曜日

消えゆくもの 移りゆくもの




 パタヤに着いた翌日、管理事務所へ保管してもらっていた郵便物を受け取りに行った。3ヵ月も留守にしていたので、かなりの数の郵便物が届いていた。バンコク週報、恵庭市民文藝、ダコ、ニュース・クリップ、バンコク・シティーファインダー、ノイズ、びぃあん・ちぇんまい等等、手下げの紙袋にいっぱい入っていた。事務員のおばさんにお礼を言って、土産のお菓子を渡して事務所を後にした。

 外に出ると、ガードマンや掃除のおばさんたちが輪になって騒いでいる。何だろう? 輪の中を覗いてみると、ひもに繋がれた細長い物体が動いていた。

 うぁ、でかいトカゲだ! 

 緑色の身体に茶色の模様がある、全長1メートルほどの大トカゲ。誰かのペットかなと思ったら、ガードマンがコンドミニアムの敷地の隅で見つけたらしい。日本なら大騒ぎになるだろう。

 パタヤの街中にもガラパゴス島のコモドドラゴンみたいな大トカゲが棲息しているとは、さすが南国である。

「これどうするの、食べるの?」 
 とおばさんに尋ねると、

「ノー、逃がしてあげるわ」
 そう答えた。

 イサーン地方では食用のトカゲがいると聞いたが、いくらなんでもこんな大きなトカゲは食べないようだ。やがてガードマンの男はバイクに乗り、トカゲを空中に吊るしながらどこかへ行ってしまった。

 夕方、久ぶりにジムへ行こうとバイクに乗ってコンドを出発した。コンドの南側には広い空き地がありその一部はうっそうとした原野になっていた。その辺りには小さな沼もあり、2メートルほどの草木が生い茂った湿地帯である。まるで、マングローブの陸封型のような場所だった。

いつもバイクで脇の道を走っていたが、一度も中には入ったことはない。富士山麓の樹海を連想させる原野で、白骨体が出てきそうで気味が悪かったからだ。ところが、そのジャングルが突然に姿を消していた。

草木は綺麗に刈り取られ、湿地の上には白茶色の砂が敷かれて整地されていた。砂漠のような乾いた大地では、子供たちがサッカーを楽しんでいた。3ヵ月の間にずいぶん変わったものだ、そんなことを思いながら走っていると、ふっとさっきのトカゲを思い出した。

あっ、わかったぞ! あの大トカゲはここに棲んでいたんだ。いうなれば、このジャングルの主だったのだろう。それが人間によって住まいを奪われたから、ニランコンドに迷い込んで来たのだ。かわいそうに・・・。

あのガードマンは、どこへトカゲを連れて行ったのだろうか? スクムビット通りの山沿いにはまだ未開発の原野があるから、多分その辺りに逃がしてあげたのだろう。

近年、パタヤは建設ラッシュでどんどん森が消えて行く。人間にとっては便利になるからいいことだが、そこに暮らす動物たちにとっては死活問題だ。パタヤもやがてはバンコクのようにコンクリートジャングルになってしまうのだろうか。そうなったら、私もどこかへ移らなければならないだろう。

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