2009年3月30日月曜日

一時帰国







昨年12月24日にパタヤに戻り、3ヵ月と1週間パタヤで過ごした。その期間に、南部の温泉ツアーに出掛けた。すばらしい温泉に入り、クラビのビーチで楽しい時を過ごした。その後は、ラオス・ビエンチャンへビザを取りに行った。

 1月23日にはセントラル・フェスティバル・パタヤビーチがオープンした。フジ・レストランやZEN、8番ラーメンはもちろん、シャブシ、スキシ、ペッパーランチ、ヤヨイ軒など、和食の店が軒を連ねて和食戦争状態になった。

 3月20~22日はミュージック・フェスティバルが開催された。ゴルフ&マイクを見ることができたし、いつも朝食を食べているKOOL・HOUSEの夜勤の女性とも仲良くなった。日本からの友人も多くやって来て、充実した3ヵ月であった。

 ただ、本業の執筆の方があまり進んでいない。インドの話は、まだ50枚(400字原稿用紙)しか書きあがっていない。これでは、夏までに発行できるかどうか? 東京に滞在中も書き続けないといけない。

 4月はソンクラン休みが入るので、5月分の原稿(NOISE、バンコク・シティ・ファインダー)も今日送った。これで、インドの原稿執筆に集中できるぞ! 日本で美味しいものを食べて、またパタヤに戻って来ます。連休にもお客さんが来るので。

2009年3月27日金曜日

傍聴人 その9







ついに今日(3月27日)に中園氏強盗殺人事件の判決が下される。3月3日から5日の公判を見た限りでは、決定的な物証は出てこなかった。タイ警察は、初動調査を怠ったとしか考えられない。この状況で、検察側は佐々木の計画的強盗殺人を立証できるのだろうか?

 判決の結果、有罪でも無罪でも一審ですべてが終わる訳ではないだろう。いずれの判決でも控訴、上告となって最高裁まで行くことになると思う。だが、私はタイの裁判所ならびに仏陀を信じている。奴は間違いなく有罪だ! 懲役20年は受けるだろう。

 午前8時40分にパタヤ地裁へ出向いた。すでに、HさんとTBSの記者が立ち話をしていた。佐々木の女房の姿はない。彼女はマスコミが来るので、判決当日は裁判所には来ないと漏らしていた。囚人護送車が現れると、TBSの記者とアシスタントは、裏の拘置所へインタビューに行ってしまった。Hさんと彼の奥さんと3人で、前回と同じ第11小法廷に入った。

 9時10分、本件の担当ではない検事が3人入って来た。また別件の裁判(判決)を同時に行うのであろうか? 日本ではありえないことだけど、ここはタイだからこんなことがまかり通るのである。まぁ、刑を伝えるだけだからいいけど。

 裁判長を待っていると、中園氏の彼女のプーが現れた。彼女はジョムティエンのホテルに勤めていて、夜勤明けで駆けつけたようだ。かなり、眠そうな顔をしていた。私が、タイ語で「死刑、懲役、終身刑」と書いた紙を見せて「佐々木はどれ?」と訊ねると、死刑を指差した。そうだろう、彼女も中園氏にぶら下がって生きてきた女だ。金の卵を産むニワトリを殺された怒りは、我々の想像を超えるものであろう。

 佐々木の弁護人も登場した。役立たずの国選弁護士である。彼は、佐々木の女房に車代やコピー代、食事代などを請求したらしい。タイでは、国選弁護士は完全にボランティアなのだろうか? それとも、悪徳弁護士の単なるタカリなのか?

 法廷は3件の事件の関係者でいっぱいだ。そこに、佐々木とタイ人が足に掛けられた鎖を持ち上げて入って来た。佐々木と目が合うと、彼は小さく頷いていた。もう覚悟はできているのだろうか?

 私の隣にTBSのアシスタントのタイ人女性が座っていた。彼女に「佐々木の刑は?」と訊くと、「ノット・ギルティ(無罪)」と言った。何を言っているんだろう、この娘は。無罪の訳ないじゃないか、これだけ状況証拠が揃っていて、佐々木の嘘もバレバレなのに・・・。

 やがて、裁判長が現れて判決を下した。まず、タイ人は懲役12年。被告人はうなだれて罪を認めていた。続いて佐々木。今日は日本語の通訳が来ていないので、Hさんの奥さんが通訳した。彼女は佐々木のそばへ行って、
「チケー、チケー」と言った。

 佐々木はキョトンとして何のことか分からない様子。タイ人は、サシスセソがうまく発音できない。私が佐々木に近づいて、
「死刑ですよ」と言うと、
「何で、何で」と答えた。まだ、彼の芝居は続いている。
「あと2回裁判ができます」控訴、上告ということだろう。

 おお、MY仏陀! この俗っぽいパタヤにも正義は存在した。思ったとおり有罪、それも死刑だ。ソム・ナム・ナー(ざまあみろ)。これから控訴、上告があるけれど、とりあえず死刑!! 裁判長さん、あっぱれ、あっぱれじゃ!!

 TBSのアシスタントの話では、本人が罪を認めないから死刑らしい。正直に罪を認めれば、懲役20年くらいで済んだかもしれない。このまま、控訴、上告をしても多分覆されることはないだろう。

 もう猿芝居はやめて、観念しろよ、池田研五! このままだと、刑務所の檻の中で一生サルのように暮らすことになるぞ!

  

2009年3月26日木曜日

久々の釣り







タイ湾で1年ぶりに釣りに行ってきた。ある居酒屋さんの仲間が主催して、船をチャーターした釣行である。日本人17人、タイ人7人の合計24人が船に乗り込んで、10時15分出発した。釣りとしてはちょっと遅い出発だけど、このグループはどちらかというと、のんびりと釣り&酒&釣った魚の刺身を楽しむ人たちらしい。

 11時に漁場に着いて、釣りを開始した。今日は1ヵ月のうちで一番潮が早い日で、海底はかなり流れていた。錘は50号を使ったが、それでも流されて魚信(アタリ)が取りにくい。こんな日を選ぶなんてあまり釣りを知らない人だと思ったが、連れて行ってもらう立場だから仕方がない。

 それでも、自称釣り名人の私は20センチのハタを2匹釣り上げた後、40センチのコロダイをヒット!!
パタヤで5年間釣りをしているけれど、近場で40センチのコロダイを釣り上げたのは初めてである。潮の流れが速いから、どこからかコロダイがやって来たのかもしれない。

 私がヒットした後に、糸を持って手釣りをしていたタイ人が、いい形のコロダイを釣り上げた。やはり、どこからか回遊して来たのであろう。ラッキーだ! コロダイは昼食の時に刺身にしてみんなで食べた。

 午後は、潮の流れがさらに速くなり魚信が取りづらくなった。それでも、錘を60号に換えて何とか釣り続けた。20センチ以上のイトヨリダイ、プラーデーン(イトヨリダイの仲間)、ハタなど20匹ほどはお土産に持ち帰った。その他の雑魚は、昼食の時にスープとフライにしてもらって食べて、残りはは船員にプレゼントした。

 魚は持ち帰ったが疲れてしまったので、とりあえず冷蔵庫に入れた。明日、刺身と煮つけを作って食べるつもりである。久しぶりの楽しい釣りであった。

 明日は、中園氏事件の判決が下る。9時には裁判所へ出向いて、法廷に入らなければならない。だから今夜は早く寝ます。

2009年3月23日月曜日

パタヤ・インターナショナル・ミュージック・フェスティバルその2







初日は、ゴルフ&マイクを見るために、熱気と声援の中で3時間も立っていたので疲れてしまった。2日目の土曜は、日本人の歌手や韓国の女性グループを見に行こうと思っていたが、気合が入らず断念してしまった。もともと人ごみは嫌いなもので。

 最終日、セントラルのステージで予定されていたTAXIを見るため、午後7時にTOPSにやって来て駐車場にバイクを止めた。ステージは9時からなので、いつものKOOLでビールを飲んで時間をつぶした。

 8時半に店を出て、ステージまで歩いていった。道路は通行止めで、屋台がいっぱい並んでいた。KOOLのお姉さんも店先に屋台を出して、ビールや帽子などを売っていた。タイの人たちはみんな商魂たくましいなぁ。

 ステージの前は大勢の人で溢れていて、なかなか前に進むことはできない。それでも、前の人が帰るところを見計らって徐々に前に進んで行った。ステージでは歌手がひとりでギターを弾いて歌っている。演奏は多分カラオケだ。

 9時になって別の歌手が出てきたが、TAXIではない。私は知らない歌手だが、観客には結構受けていたから、有名な歌手なんだろう。30分ほどで終了して、司会者がみんなにプレゼントを投げた。運良く、私のところに黒いTシャツが飛んで来たのでキャッチした。ラッキー!! でもあとで見たら、女性用のTシャツだった。残念!

 
「次はTAXIですか?」ととなりのタイ人女性に聞いたら、「タイタナウッド」と答えた。
タイタナウッドはかつてトンチャイのバックバンドでギターを弾いていた人で、もう10年位前に流行った歌手である。私も当時のカセットテープを持っている。最近はどうしているのか? 

 私が知っている懐かしい曲を披露して30分で終わった。その後は、『SO COOL』が出演した。TAXIはどうなったのか? タイ人に聞いたらバッテンをしたから、キャンセルになったのかもしれない。

 人ごみの中で2時間立って写真を撮っていたら、全身汗びっしょりになり、帰ることにした。TAXIの後は、23:00からバリハイで『BODYSLAM』のステージを見るつもりだったが、疲れきって気力がなくなった。また来年がんばろう!

2009年3月21日土曜日

パタヤ・インターナショナル・ミュージック・フェスティバル







 初日、行って来ました。まぁ、スゴイ人と警備の警官。初日の目玉は、日本でも人気が高い2人組みアイドルのゴルフ&マイク。18:00から始まる予定が30分遅れ、G&Mの出番は20:00になった。バリハイ・ピアのコンサート会場には若い娘がいっぱい。ジャニーズ系のアイドルだから仕方がない。

 バックダンサーが登場すると、会場は割れんばかりの黄色い声援。ダンサーたちはみんな仮面をかぶっているのだが、その中の2人がG&Mだった。仮面を取ったら、キャー!     
って、スゴイのなんの。ハイテンポな歌とHIP HOPダンスで会場を沸かしていた。

 こっちはカメラを構えて連写を続けたが、動きが早すぎてあまりいい絵は撮れなかった。3時間も立ったまま写真を撮っていたので疲れてしまい、23:30からアイス・サランユーのステージがあったけど、帰ってきてしまった。また明日もあるし。

 昨年はご不幸のため中止になり、一昨年はテロ対策のためビーチではなく室内ホールで行われた。今年は3年ぶりにビーチで盛大に行われている。明日は、日本からのミュージシャンを見に行く予定である。

2009年3月18日水曜日

PIMF いよいよ開幕!







 えっ、何が開幕ですか?
 
 何がって、毎年3月の第3週末といえばパタヤ・インターナショナル・ミュージック・フェスティバルに決まっているでしょ。昨年はある事情により中止になったが、今年はその分盛大に行われる模様だ。

 確か、2005年にバンコク週報からVIPチケットをもらってターター・ヤングを見に行った記憶がある。なんと、ミュージック・フェスティバルを見るのはそれ以来である。まったく、パタヤに暮らしていながら灯台下暗しである。

 今年は、アイス・サランユー、ゴルフ&マイク、ボディスラムなどの超有名人気歌手に加えて、懐かしいTAXIやJOEY BOYなども登場する。韓国や香港、日本の人気歌手、バンドも参加する予定だ。楽しみである。

 今日、コンサート会場を視察に行ってきた。会場は、南からバリハイ・ピア(桟橋)、セントラル(セントラルロードがビーチに突き当たったところ)、Soi4特設会場の3ヵ所である。プログラムにもそう書いてあったが、何故かロイヤルガーデンの前にもステージが造られていた。何だろう? セントラル・フェスティバル・パタヤビーチ(Soi9にオープンしたセントラルデパート系の巨大なショッピングモール)にすっかり客を奪われてしまったので、客寄せに別枠でコンサートをするのだろうか?

 開催は20日(金)から22日(日)の3日間となっている。ステージの出来具合はまだ造り始めたところで、20日夕方までに間に合うかどうか。あと2日しかないけど、大丈夫ですか? 

2009年3月11日水曜日

傍聴人 その8




午後4時20分に再開し、検事の質問が始まった。

タイに偽パスポートで入国して、その後日本へ帰ったことがありますか? あります
帰国した時は、偽パスポートで入国、出国しましたか? はい
日本での犯罪、ひとつはケンカ、ひとつは強盗で8年の刑を受けましたね? はい
日本から戻った時、500万円を持って来たのか? はい
500万円は2年前に持って来たのか? はい 自分のです

 自分のですと答えたが、さっきは姉さんに借りたと証言している。姉さんに借りて自分のものになったということなのか?

ノックと住んでいる。女はひとりだけか? はい
毎日、ノックは9時から23時まで仕事、いつもひとりですか? 送り迎えは私です
仕事のお手伝いはしませんか? 手伝います
ノックを送ってから迎えに行くまではあなたは自由ですか? はい、そうですね
あなたは自由で、ノックは店で商売をしていますか? はい
ノックへお金を渡していないか?(商売への関与) はい

 それは嘘だ。佐々木が品物を仕入れて、ノックに売らせている。ノックには日当300バーツを渡して、儲けは自分のものだ。これは完全な不法就労なのだが、金貸しと同様に、検察側は不法就労については言及していない。それとも、殺人が立証できなかった場合つけ加えるのだろうか?

あなたはお金を常に身に着けていますか? いいえ、家にあるバッグの中です
いつも持って行くお金は、日常生活上のお金ですか? 大金はないけど3~4万バーツは持っている
腕が痛いと言っているが、釣りに行っている時は治っていたのか? 治っていなかった。リールはキャプティンに巻いてもらった

 これも嘘だ。真夜中に10キロ級のコロ鯛をひとりで釣り上げたじゃないか。目撃者もいるんだぞ! このハゲおやじ、地獄へ落ちろ!!

腕は右だけ? はい、左は大丈夫
車を借りた時、サニーはありましたか? あれは義弟の車ですから
まだあるのか? ある、名義は違う
タイに来た時から事故を起こしたのはどのくらいか? 2年経ってから起こした
事故の時、中園さんからお金を借りようとしたのか? その話はノックから聞いたが、私は意識不明だったから知らない

 これも怪しい。意識不明だったかどうか、バンコクパタヤ病院で調べる必要がある。女房が勝手に金を借りに行くだろうか???

お金は治療のためですか? そうだと思います

 そういえば思い出した。私が佐々木と知り合った頃、事故の話を聞いたことがある。治療費は70万バーツくらい掛かったと言っていた。私が「日本の国民健康保険に請求すれば7割近くは戻ってくるよ。もったいないですよ」と言ったら、「そんなのいいんだよ」と彼は答えた。今考えれば、偽装パスポートで入国している奴が健康保険に請求できる訳はない。その時はたいして気にも留めなかった。

(写真を見せて)バッグは中園さんからもらったものか? 違います。これはパタヤで買ったものです
他のものはもらいましたか? 違います
なぜここに(佐々木宅)にある? これはもらった物ではない
ラーメンは? ・・・分からないですねぇ
これは(薬)あなたの家で見つかった物ですね? はい
このウエストバッグはノックの店の物ではありませんね? 店の物です。さっきの物とは違う
このパソコンは中園さんの物で、タイで買った物ではない? それはそうでしょう。中園さんが私に土産で買って来たのだから
この写真の物はあなたの家で見つかって、持って行かれた物ですね? はい

 繰り返し何度も言うけど、中園氏は男に土産など買ってくる人じゃないんだよ、ケチなんだから。パタヤで一番お世話になっているHさんだって、もち、ラーメン、自分の会社のカレンダーくらいしかお土産にもらったことはないと言っていた。中古とはいえ、ノートパソコンなら4~5万円くらいするだろう。そんな高価な物をくれるはずがない。

この車で中園さんを迎えに行ったのか? はい
この車にニットという女性を乗せたのか? はい
この車はフードランドの駐車場で借りた? はい
12月14日、現金とパソコンは中園さんからもらったものか? はい340万円には自分の金も入っている

 自分の金とはどういうことだ? 貸した金を返してもらったのだったら、全部自分の金じゃないの? ほらほら、だんだんボロが出てきたぞ!!

迎えに行った時、車の助手席に中園さん、女は後ろですか? はい
迎えに行った人はこの写真にありますか?(空港の監視カメラに写っている中園氏)はい 指差す
自宅に警察と中園さんの息子が来た時、中園さんと空港で別れたことは言っていませんね? はい
その日はお金をもらって別れたのか? はい
そのままパタヤに戻りましたね? はい
逮捕の時の記録、あなたは書類にサインしていませんね? しました
家ではサインしてないですね? 家では書類はなかった
脅迫されてサインしましたか? 分からない
お金を貸す時には、タイ人、日本人と限らず契約書を作りますか? はい
奥さんの妹に金を貸した時は、車を担保にして貸したのですか? はい
2回ともですね? はい
中園さんはあなたより10歳くらい年上ですか? 知らないです。ないかもしれない
釣り仲間はAとMですね? はい
釣りの場所はサタヒップですか? バンサレー、サタヒップ、ともう1ヵ所
中園さんはウエストバッグをしていましたか? はい
レンタカー屋でフィルムを貼って貰った事は認めますか? はい
釣り仲間と奥さんなどに恨みはありませんか? いいえ、ありません

 これで、検事の質問は終了した。決定的な証拠や凶器などの話は出てこなかった。大丈夫ですか? 検察側。これで強盗殺人罪を立証できるのですか? それとも、何か確固たる証拠があって、すでに裁判長に提出済みなのかもしれない。

 午後5時10分、再び弁護人の質問

借用契約書は誰に渡しましたか? 中園さんに
息子が来たのは警察と一緒か? はい
どうしてその時、中園さんはバンコクへ行ったと言わなかったのですか? 3人は私を犯人と見ていて、頭にきたから言わなかった。

 普通はそうじゃないでしょう。自分が殺人犯に疑われたら、身の潔白を証明するために真実を言うはずだ。本当に空港で中園さんと別れたのならば、そう言う筈である。だが、別れたのはサタヒップの山中だったから、言えなかったのではないか?

サニーがない時は、どんな車を使うか? バイクです
右腕はどうですか? ひねると痛いです
ケンカをした時、役に立ちますか? ノックにも負ける
警察が持って行った現金をあなたはちゃんと見ましたか? 見ていません
いつも使っているバッグと中園さんのバッグはどこで買ったか分かりますか? わかりません
中園さんに電話でパソコンを教えてくれと言ったことがあるか? ないです

 私も毎日バイクを乗っている。バイクはギア付きでもオートマチックでも右手でアクセルを回す。スピードを上げる度に右手をひねることになる。骨折の後遺症でひねると痛い人が、バイクに乗れますか? 車で逆ハンドルを切れますか? こんな与太話に付き合えるのは、無能な国選弁護士しかいないよ。

 以上で終了した。時刻は5時20分。判決は3月27日に出るそうだ。私はビザの関係で19日に一時帰国する予定だったが、急遽帰国日を変更することになった。3日間も付き合って、ミステリーの結末を聞かないで帰る訳には行かない。判決は有罪であれ無罪であれ、このままで終わることはないだろう。日本ならば強盗殺人事件の判決を受けて、控訴、上告となるだろう。でも、ここはタイだから「はい死刑!」で控訴棄却で終わってしまうかもしれない。


 

2009年3月10日火曜日

傍聴人 その7




(その6からのつづき)
 中園からの連絡を受けてからレンタカーを借りたのですか? レンタカーは中園とは関係ない。ニットと前から約束していて、借りる予定だった。

 ニットという女はどこの誰なのか? パタヤ警察の拘置所に拘留されている時に、その女のことを聞いたことがある。カルフールのKFCでコーヒーを飲んでいたら、女がファランとケンカをしてファランが立ち去った。その女が自分のところへ来て、日本語で話しかけてきたというのだ。そして商談が成立して、一緒に旅行へ行くことになったらしい。しかし、警察では、名前以外は何も分からないと話したらしい。電話番号が分からなければどうやって連絡を取ったのか? 犯行当日はどこで待ち合わせをしたのか? まったく、辻褄が合わない話である。

 その女性は奥さんではありませんね? はい
 レンタカー屋に何をしてもらったか? 窓にフィルムを貼ってもらった
 車の借り賃はいくらですか? 一日2000バーツ×3日=6000バーツ
 いつ払いましたか? 借りる時に5000か6000払った
 車の写真を見せて確認
 中園さんとの約束はいつでしたか? 12月14日
 どこで会った? スワンナプーム空港
 迎えに行く前、会う場所を約束しましたか? 空港の出口です
 迎えに行く前、奥さんには何と言ったか? 日本へ帰ると言った
 約束どおりに会いましたか? そうです
 何時ですか? 4時40分
 会ってからすぐに金を返してもらいましたか? いいえ 駐車場へ行きました
 駐車場は何階ですか? 2、3階です
 その時もらえる金利はいくらでしたか? 10万~15万円
 中園さんから310万円を正しくもらいましたか? はい
 もらった金はどこの金? 日本円です
 一万円札の写真を見せて、日本の銀行からの金ですか? 私には関係ない
 どうして銀行振り込みで返さなかったのか? 現金で貸したから現金で返してもらった
 お金はどこにキープしたか? 家のタンスの中です
 車が発車してから何があったか? 駐車場を出る前に中園さんがバンコクへ行くと言い出した。私はバンコクの道は分からない。彼女もいたから行きたくなかった
 中園さんから貸した金以外に何をもらったか? チョコレート、カレンダー、パソコン。私にはパソコンは使えないけど「今からパソコンを勉強すればいいよ」と言われた。
 
 まったく、嘘ばかり。聞いていて腹が立ってくる。後ろから首を絞めたくなってきた。でも、そんなことしたらこっちが殺人者になってしまう。あのノート・パソコンはノイ(カラオケの女)におねだりされて買ってきたものだ。それも中古品だ。中園氏は自分が惚れた女に対しても超ケチな男なのに、どこの馬の骨かも分からないハゲおやじにパソコンなど買ってくる訳がない。絶対にありえない!!!
あぁ、神様仏様、嘘つき佐々木に天罰を与えてください、お願いします。

 中園さんはどこで車を下りましたか? パーキングを出て左折して30メートル先にタクシーが止まっていたのでそこで下りました。

 そんな所にタクシーが止まっている訳はないだろう。一般のタクシーは地下一階の通路にしか入れないことになっている。これも佐々木の作り話だ。

 それからパタヤに向かって、パタヤに戻ったのは何時? 8時過ぎ
 そのまま女とどこかへ行った? はい
 どこに泊まったのか? ホテル
 女の名前はニット? はい
 何泊しましたか? 一泊
 女にいくらあげましたか? 4000バーツ
 
 これも作り話である。昨年、佐々木の供述に基づいて警察がソイ・ボッカオのホテルを探しに行ったが、本人曰く「暗くてよく判らなかった」そうだ。そんな訳はない。現在のソイ・ボッカオは昼間より夜の方が明るいくらいだ。ホテルの名前、宿泊料金、フロントは入口から向かって左右どちらにあったか? エレベーターはどこにあったか? などの質問にも答えられなかったそうだ。これは作り話としか言いようがない。私の推理では、中園氏を殺害した後、トラート方面へ車を走らせて、どこかで野宿したのだろう。そして、翌日パタヤに戻ったのである。

 それから家に帰りましたか? いいえ、TOPSに行きました
 ノック(女房のあだ名)に会ったのはいつ? 午後2時か3時ごろ
 ノックに会って何を渡したか? 10万円
 どういう理由で? 浮気をした償い 両親への正月のお小遣い
毎年お年玉をあげているのですか? 毎年です
Hさんへ電話をしたか? はい
いつ? 12月15日
何時ごろ? 昼ごろ
どうして? 中園さんがパタヤに帰ってきたか知りたかった
Hさんにどうして聞いた? 中園さんと仲がいいから

Hさんの証言では、佐々木は「中園さんはいつ頃帰って来るのだろうか?」と言ったとされている。昨日、自分で空港まで迎えに行っているのに、いつ頃と言うのはおかしい。「昨日空港で別れたけど、バンコクからパタヤに戻ったのか?」と言うのなら話の辻褄が合うが。この電話を聞いてH氏はピンときた。佐々木が中園さんを殺したに違いない。そこで、大使館に捜索願を出したのである。

いつ車を返しましたか? 16日
どこですか? TOPSの駐車場で
車を返して、自宅に警官が来たのはいつですか? 17日夕方 ???
間違いないですか? 間違いないです

家宅捜索は18日である。わざととぼけているのだろうか? 意味が分からない

警察はどうやって来ましたか? ドアを叩いて「佐々木、佐々木」という声がした。そして、警官が入って来た。中園さんの息子が「父をどこへやった?」私を犯人扱いした。「何を言っているんだ」
これはあなたの家ですね? はい
買った家ですか? いいえ、借りています
警官は何と言ったか? タバコの不法所持
捜査令状はありましたか? ない
捜査令状を見ましたか? ない あの日は書類は何も出さなかった
家で見つかった物の書類にサインしていないですね? はい
物を持っていかれて、どういう理由かと言われたか? わからない
警察は何を持っていきましたか? 現金、バッグ、パソコン、タバコなど
12月20日の逮捕の時、通訳はいましたか? いません
罪名は分かりますか? 分からない 言葉が分からないから
警察での証言の記録の内容は分かっていますか? 通訳は字が読めないので分からない
窃盗の次は殺人罪と言われたが分かりましたか? 言葉が通じないので分からない
シャツの袖の赤い布は、殺人容疑の印です
日本政府の人は会いに来ましたか? はい 大使館 警察官
警察との話の中で罪名を聞いたか? はい 殺人罪と言われた
あなたの体格と中園さんはどちらが大きい? 中園さんです
力は中園さんの方がありますか? 中園さんの方ががっしりしている
例えば、ケンカをしたらどっちが勝つと思いますか? 負ける
バンコクへ行く時にナイフを持っていきますか? いいえ

 以上の答弁から、警察の強引な捜査の状況がうかがえる。だが、殺人容疑で証拠隠滅の恐れがあれば強制捜査をするのは仕方がないだろう。警察は、銀行の帯封がついた3百万円以上の現金と、パソコンが出てきた時点で佐々木が犯人に間違いないと確信したのだろう。ところが、佐々木は口を割らない。言っていることは二転三転して信憑性はないが、状況証拠だけで決定的な証拠がない。さて、これからどうなるのだろうか?

午後4時、弁護側の質問が終わった。これから休憩を挟んで、検察側の質問に入る。今日中に終わるだろうか? 

2009年3月9日月曜日

傍聴人 その6




休憩時間にH氏と食堂へ行き、昼食を食べながら話をした。証人質問では出ていなかったが、レンタカー内に中園氏の血痕はなかったのだろうか? 凶器はまだ発見されていないのであろうか? 私が捜査官なら、タイヤの溝に付着した土と遺体発見現場の土を照合するだろう。遺体発見現場ならびに国道3号線のGスタンド、コンビニ、食堂などに徹底的に聞き込み調査をするだろう。タイの警察も検察庁も詰めが甘いような気がしてならない。

 午後1時38分開廷、ついに被告人佐々木が証言台に立った。時間の関係で、第一発見者の村長、軍人への質問はカットされてしまったようだ。通訳の後に続いて誓いの言葉を述べる佐々木容疑者。どうせ仏陀に誓ったって、嘘ばかり言うに決まっている。そもそも、名前からして偽名じゃないか! このインチキ野朗の人殺し!!!

 裁判長から、
 名前は? 本名 池田研五(起訴状では佐々木利彦)
 年齢は? 60歳(起訴状では55歳)
 職業は? ない
 住所は? 154-17 Moo 10 ノングプルー バングラモン チョンブリ
 
 まず、弁護人からの質問
 健康状態は? 元気です
 悪いところはありませんか? ありません
 腕はどうですか? (思い出したように)右手首を骨折したことがある
 怪我の治療は? バンコクパタヤ病院で
 事故の詳細は? 交通事故です。バイクに乗っていてピックアップ・トラックにぶつけられました。頭と腕を打ちました
 事故はいつですか? 事件の2年前です
 腕はどうなったか? バンコクパタヤ病院からチョンブリの病院に移り治療をしました。その後、不安だったから日本に帰ってレントゲンとMRIを撮りました
 今、腕は大丈夫ですか? ねじると痛いです
 右手は充分に使えないということですか? はい

 弁護人は佐々木が右腕を充分に使えないので、両手足切断などできないという答えを導
き出そうとしている。打ち合わせどおりの答弁だ。だが、それは真っ赤な嘘で、女房とよ
くケンカをして、鼻以外は殴っていたようだ。釣りの時にも、自力で10キロクラスを釣
り上げていた。だいたい、腕を叩き切るならねじる必要はない。力を入れて思いっきり包
丁を振り下ろせばいいのだ。多少痛くても、一瞬のことだから火事場の馬鹿力でできるだ
ろう。

 (写真を見せて)ウエスト・バッグはあなたの物か? 自分の店で売っている物だと思           
                          う
 もう一度確認してください。 そうです

 このやり取りも、弁護人が無理やりに自分の物だと言わせている。裁判長は分かってい
るのだろうか? 

 金貸しの件
 お金はどこから持って来たのか? 日本の姉から借りてきた
 いくらですか? 500万円を2回

 佐々木は偽造パスポートでタイに入国してから、一度しか日本に帰っていないはずだ。
これもおかしい。これは後で裁判官がパスポートを見れば検証できる。

 その金を誰に貸しましたか? TOPSの宝くじ売りに25万バーツ、女房の妹に20万バーツと30万バーツ、日本人に5万円
 金利はいくらですか? 3%(私には5%と言った)
 中園には金を貸しましたか? はい、300万円です。
 いつ貸しましたか?  2007年の7、8月です
 中園はその金を何に使うと言いましたか? 車を買うため、ラオスの姉妹を買うため

 中園氏は金を借りたとされる時点で、すでに車は会社名義(現地法人)で所有していた。
これも佐々木の口から出まかせである。あと、これは個人的見解だが、キーニャオの中園
氏が月5%の金利で金を借りる訳はないと思う。佐々木は、2007年8~9月にロング
ステイ・ビザの更新があり、妹に貸していた金を返してもらったがそれでも80万バーツ
を揃えることができず、あるタイ人に40万バーツを借りて翌日に返している。ビザ更新
の金がない人間が他人に300万円も貸すだろうか???

 金利はいくら? 5%(さっきと違っている)
 いつ返すことになっていたのか? 年内
 どうして中園を信用したのか? 日本で不動産会社の会長をしていると聞いたから
 事件前、中園に金を返せと言いましたか? いいえ、年内に返すと言っていたので。
      借用書とパスポートのコピーを持っていたので請求はしなかった
 借用書はどこ? 現金と引き換えに中園に返した
 金を返してもらう時には、連絡がありましたか? ありました
 いつですか? 12月13日です
 
 300万円の金を返すのに、前日に電話をするだろうか? もっと前から聞いていたに
違いない。これも佐々木の出鱈目な答弁だ。佐々木は好き勝手なことを言っているが、所
詮死人に口なしで、後から何とでも言える。こんな茶番劇を聞いていても腹が立つだけだ、
ばかばかしい! だが、質問はまだまだ終わることはなく、佐々木の嘘で固めた答弁も長々
と続いた。

 



 

2009年3月8日日曜日

傍聴人 その5







 3月5日、今日が公判の最終日だ。被告人佐々木の証人は誰もいないから、本人が証言台に立つことになるだろう。佐々木への質問には時間がかかりそうだ。早めに行かないと、始まってしまうと思い、9時10分に第11小法廷に入った。すると、昨日と違う検事と弁護人が座っていた。これはおかしいぞ!!

 私は、タイ人男性の隣に腰掛けた。彼はTOPSの近くのレンタカー屋の主人で、原告側の証人として呼ばれていた。その他にも、軍人や警官、第一発見者の村長さんの姿もあった。大体今までのところ、質問時間はひとり1時間かかっている。今日は5人、しかも被告人への質問があるから遅くなりそうだ。

 通訳の人に訊いたところ、佐々木はタバコの密輸、窃盗、偽造パスポートによる不法入国・不法滞在に関しては認めていて、現在はそれらの罪で服役中とのことだ。本当に服役中なのか、それともこれから刑期が決まって、そこから拘留期間を差し引いて残り期間を服役するのか、正直言ってよく判らない。とにかく、検察側はそんなチンケな罪ではなく、計画的強盗殺人を立証するために必死になっているのだ。

 9時35分、法廷の奥のドアから両足を鎖で繋がれた佐々木ともうひとりタイ人の囚人が入って来た。誰だ、あいつは? もしかしたら共犯者か? 通訳に訊いたら、そのタイ人は別件で裁判を受けるらしい。彼は佐々木と違って罪を認めているので、すぐに終わるらしい。いくらすぐに終わるといっても、2つの裁判を同時に行うとはいかにもタイらしい。

 裁判長が入廷して、別件の裁判が始まった。被告人は証言台に立ち、罪を認めて30分で終了した。めでたし、めでたし。佐々木も早く自供すればいいのに、本当にしぶとい男である。刑務所慣れしているのか、裁判慣れしているのか、日本では相当悪いことを繰り返してきたのだろう。筋金入りの悪党だ!

 さて、いよいよ本件開廷と思っていたが、検事が法廷を出たり入ったりしている、何をしているのか?
「あっ、そこにいたのですか」
 検事はレンタカー屋の主人を探していたのである。検事は苦笑いだが、法廷中は大爆笑! 裁判長も呆れ顔をしていた。強盗殺人の裁判がこんな調子でいいんですか? テレビの刑事ドラマだってこんなシーンはないですよ!!

 やっと全員が揃い、10時36分に開廷した。まずは、レンタカー屋の主人が証言台に立った。彼は、佐々木に3日間車を貸した。トヨタVIOS ナンバーはチョンブリ6109 色は金色。12月14日午前10時、フードランドの駐車場で佐々木に車を渡した。その時は佐々木ひとりだった。

 彼は、3日間の走行距離は約800キロと答えた。パタヤからスワンナプーム空港まで約130キロ、帰りはサタヒップ経由で戻っても300~350キロくらいである。ということは、遠出をしたという偽装工作のため、残りの450~500キロを走ったのかもしれない。3号線をトラート方面へ走り、適当な場所で戻って来たのではないかと私は考えている。

 弁護人は、女房がTOPSで店をやっていること、ウエスト・バッグも売っていること、どうしてレンタカーの窓にフィルムを貼ったのか、などを質問していた。佐々木は、以前にも同じ車を借りて、その時にフィルムを貼らせている。女房以外の女と出掛けるので、誰かに見つかるとまずいからだと言っていた。が、スキンヘッドの爺さんはパタヤには腐るほどいる。サングラスをかければ、どこの誰か分かるはずはない。これも、中園氏殺害のための計画的な工作としか考えられない。

 11時10分からは、家宅捜索に立ち会った警官の質問が始まった。パソコンは中園氏の息子カツノリが買ったこと。空港で現金とパソコンを受け取ったこと。何度も調書や写真などの資料を見せて確認を取り、裁判長に報告していた。

 弁護人はタバコについての質問をしたが、裁判長から「それは関係ない」と怒られていた。タバコに関しては、佐々木は認めているのだから余計な質問はするな、ということだろうか。時刻は12時を回り、裁判長も腹が減って苛立っているように見えた。それにしても、のらりくらりの無能な弁護士だ。カバンの件も質問していたが、要領を得ていない様子だった。12時18分、午前の部終了。

 休憩時間に、検事と話をした。佐々木は検事に以前右手首を骨折したので、殺しはできないと話したそうだ。
「そんなことない、釣りでは10キロ級の大物を釣っていたよ。バイクも車も運転して、手首が痛いなんてことは聞いたことがなかったよ。みんな嘘を言っているんだ」
 そう言ってやった。

 検事さん、鋭い突っ込みを頼みますよ!!!

2009年3月7日土曜日

傍聴人 その4







 午後1時半開廷の予定であったが、そこはタイ人時間で2時に開廷した。検事、弁護人はそれぞれ黒いマントのような上着を羽織っている。左肩からはネクタイのような布がぶら下がっていた。これが彼らの法廷での正装なのである。

 午後一番の証人は、日本人のM氏が呼ばれた。M氏は、佐々木とは釣り仲間で、TOPSというスーパーマーケットの駐車場にあるレストラン・COOL HOUSEに集まりみんなで毎朝コーヒーを飲んでいた。佐々木は、TOPS内でワゴンの店を女房にさせていた。帽子、サングラス、サンダル、ウエスト・バッグなど、南国ビーチに必要な品物のみを販売して、女房には日当300バーツを支払っていた。

 12月18日家宅捜索当日は、泊りがけで釣りに行く予定であった。午後4時ごろ、日本人の仲間4人で佐々木宅へ迎えに行ったところを、警察に仲間と間違えられて捕まってしまった。捕まったといっても任意同行であるが、警察で写真を撮られパスポートのコピーも取られた。4人のうち初めての2人はすぐに帰されたが、M氏とA氏は翌日の午前4時まで事情聴取を受けた。まるで、容疑者扱いである。当然釣りはキャンセルになり、車の中に置いてあったタバコと弁当は警官に盗まれてしまい、散々な目に遭ったのである。

 M氏への質問は、まず釣りの件だった。
釣り仲間は何人いるのか? 佐々木との付き合いは何年? 釣りに行く場所は? 釣りの費用は? などである。検事はこれらの質問の中で、釣りに行く時に通る道と遺体が発見されたサタヒップ山中への道を結び付けたかったようだ。昨年1月M氏は、A氏と共に警察の車で遺体発見現場まで連れて行かれたことがある。釣り仲間及び佐々木はこの道をよく知っていた、という答えを導き出すための工作だったのかもしれない。

 それから、逮捕当日の件を訊かれた。12月18~19日にかけて日本人仲間5人で釣りに行くことになっていた。M氏によると、当初は13~14日の方が潮回りはいいので13~14日に行こうと佐々木に提案したが、佐々木からその日は都合が悪いから18~19日にしてくれと言われたらしい。やはり、計画的犯行だったのか?

 12月18日に佐々木を迎えに行ったら、日本人が出てきて「佐々木は今日は行かれない」と言われた。しかし、本人ではないので佐々木が来るまで家の前で一時間ほど待っていた。すると、警官にM氏とA氏が呼ばれて2階に連れて行かれた。そこには、手を後ろで縛られた佐々木が座っていて、中園氏の息子2人がいた。現金約350万円とノート・パソコン、タバコなどがあった。それから、任意同行されて警察で事情聴取を受けた。

 佐々木と中園氏との関係も質問されたが、COOL HOUSEでコーヒーを飲むだけなのでよく判らないと答えていた。
2人がケンカをしたと言う話を聞いたことがあるか? いいえ
佐々木と中園が将棋をしていたのを見たことがあるか? ある
ケンカをしたことは? ないと思う
将棋はお金を賭けていたか? 分からない

 質問は2時45分に終了した。続いてA氏が証言台に立った。質問の内容はM氏へのものとほぼ同じ内容だった。
 中園と佐々木の関係は? 中園氏は直接は知りません
 タイに何年住んでいますか? 3年
 佐々木はどの人ですか? (佐々木を指差した)
 佐々木の異常な行動を聞いたことがありますか? いいえ

 Aさんはないと言っていたが、私は佐々木の異常な行動を聞いた事がある。普段われわれの前では大人しいが、女房に対しては結構短気でよくケンカをしていた。女房には自分のことを「旦那様」と呼ばせていた。店の前で、瀬戸物の貯金箱を叩き割ったり、酔っ払って祠に小便を引っ掛けたりしていた。女房は、「どこを叩いてもいいけど、鼻だけはやめて」と言っていた。自慢の鼻はコピー(整形)だったからである。やはり、われわれの前では猫をかぶっていたのだろう。

 A氏の次は、タイ人女性のノイ。彼女は26歳でカラオケに勤めている。中園氏の愛人のひとりである。小柄で色白、髪の長い可愛い女性である。中園氏とは2年の付き合いで、昔は私が住んでいるニラン・コンドに部屋を借りてもらって住んでいたらしい。中園氏は電話魔で、毎日日本から電話があったそうだ。彼女が本命の愛人なのだろうか?

 ノート・パソコンは彼女が欲しいとおねだりしたので、中園氏が中古のパソコンを買ってきたのである。中古というところが、中園氏がキーニャオ(ケチ)と言われる所以だが、それがどういう訳か佐々木の部屋にあった。検事は、証拠品の写真、空港のカメラに写っている中園氏の写真、遺体写真の確認をさせた。

 弁護士の質問は短かった。佐々木宅にあったウエスト・バッグが中園氏のものかどうかを確認させていた。彼女は中園のものだと言っていたが、同じようなものはいくらでもパタヤに売っている。写真では、判別できないだろう。指紋があれば立証できるが、その件は何も話さなかった。

 午後3時50分、今日の公判は終了した。公判は明日まで続く。

2009年3月6日金曜日

傍聴者 その3







 早いもので、パタヤに暮らし始めてから5年が過ぎた。この5年間で、日本では体験できないことをたくさん体験できた。ひとつは、目の前で遺体を3体も見たことである。飛び降り自殺、薬(バイアグラの飲みすぎによる)の中毒死、そして、組織の殺し屋に頭を銃弾で打たれた男。日本ならば、一般人が事故現場に入って写真を撮ることなどできないが、タイではOKである。

 警察の拘置所、イミグレーションの拘置所、刑務所での面会も日本では経験がなかった。そして今回、ついに裁判の傍聴人になった。それも、釣り仲間が起こしたとされる凶悪な強盗殺人事件の裁判である。初めは緊張したが、よく考えたら裁かれるのは自分ではないので気楽に聞くことができた。

 昨日(3月3日)は、午前8時半に裁判所に着いて、開廷までに2時間も待たされたので、今日は9時40分に小法廷に入った。すると、もうすでに関係者が揃っていた。釣り仲間のA氏、M氏、タイ人女性2名、警官1人が証人として座っていた。裁判長も検事も被告人もいるのだが、被告の弁護人が来ていないので開廷できない。

 10時7分、弁護人が入廷して開廷した。検事と弁護士は黒いマントのような上着を羽織っている。上着には左肩にネクタイのようなものがぶら下がっていた。これが彼らの正装なのである。初めは警官への質問で、他の4人の証人は外に出された。

 警官は、検事に言われて証言台に立った。証言台の上には、水晶玉があり中にはブッダが入っている。正面の裁判長の頭上には、王様が座っている写真がかかっている。それらに向かって誓いの言葉を述べた。

 12月18日の家宅捜索の様子を質問されて、その時の状況を説明していた。自宅、パソコン、インスタント・ラーメンなどの写真を見て確認し、裁判長に報告していた。佐々木が供述した話、カルフールで女と知り合いTOPSでレンタカーを借りて窓にフィルムを張らせたことも確認した。また、佐々木が犯行の翌日Hさんに電話をしたことも確認した。

 その後、もう1人警官が入って来た。彼は、遺体現場を担当した警官らしい。遺体発見現場への道、遺体の写真を確認した。私の席からは遺体写真ははっきり見えなかったが、身体はうつ伏せで、手と胴体、足は真っ黒になっていて、頭部だけが白かった。弁護人から遺体の写真は誰かと聞かれ、「ヒロシ・ナカゾノ」と答えていた。

 11時20分からは、タイ人女性への証人質問が始まった。彼女の名前はプー、歳は28歳、ジョムテイェンのホテルで働いている。パタヤのホテルで働いている時に中園氏と知り合った。中園氏との関係は専門用語でいうと『特殊関係人』、平たく言うと『愛人』である。彼女も中園氏にぶら下がっていた女のひとりであり、パトロンを失った被害者のひとりである。可哀そうに・・・。

 中園氏は財力に任せて、常時4~5人の愛人を囲っていたようである。その他にもウエイトレス、カラオケの女、素人娘など、色白で日本人的な気に入った女がいれば手当たり次第に漁っていた。佐々木はいつも中園氏にことを「スケベおじさん」と呼んでいた。

 気に入った女がいると、大体1ヵ月3~5万バーツの愛人契約をするのだが、いつも途中で値切るのでしばしばトラブルを起こしていた。金持ちのくせにキーニャオ(ケチ)だったのである。ある女の時には、金銭トラブルの末に睡眠薬を飲まされて、現金、ロレックスの腕時計、携帯電話などを盗まれたこともある。運良く昏睡しているところを友人に発見されたのだが、もし発見が遅れていたら死んでいたかもしれない。

 「中園さん、こんなことをしているとあんたいつかは女に殺されるよ!」とHさんにも言われていた。結果的には女かどうかは分からないが、何者かにタイで殺されてしまった。死者に対して失礼な言い方だが、自業自得だと思っている。

 プーは、中園氏との関係、12月14日にパタヤに来ることを事前に知らされていたこと、現金はロングステイ・ビザを取るためのものだったことなどを証言した。また、遺体写真の確認もさせられていた。弁護人も同じような質問をしていた。

 12時半に午前の部が終了し休廷になった。プーは午後2時から仕事があるので帰って行った。私はHさんと1階の食堂で昼食を食べた。午後は1時半から再開の予定である。

2009年3月4日水曜日

傍聴人 その2







 パタヤへ遊びに来たことのある人なら分かると思いますが、サウスパタヤから山を越えてジョムティエン・ビーチに抜ける道がある。山の頂上付近にはシュガー・ハットという森の中のおしゃれなリゾート・ホテルがあり、パタヤ・パークの塔が右手に見える。そこから少し下った左側に、パタヤ地方裁判所がある。

 3月3日朝9時集合と言われたので、バイクで裁判所へ向かった。8時半に着いてしまい、受付で「日本人の佐々木の取調べはどこ?」と訊ねたら、第11号室と言われた。2階に上がって一番奥の部屋を覗いたら、そこは小法廷になっていた。取り調べ課と思っていたが、実は公判だったのだ。

法廷の中を覗くと奥に裁判長の席があり、両側には検事、弁護士の席、中央には書記席、そして証人台。手前には証人、傍聴人の席もある。といっても、12人くらいしか座れない小さな法廷だ。これは凶悪な強盗殺人、死体遺棄、遺体損壊事件の裁判なのに、なんだか家庭裁判所で離婚裁判でもするみたいな法廷である。

9時になると関係者が集まって来た。今日は、原告の証人2人が呼ばれている。第一通報者のHさんと、被告人の女房だ。普通は、被告人の女房は被告人の証人になるのだが、何故か原告の証人として呼ばれていた。まぁ、女房も旦那が犯人だと認めているから仕方がない。

公判の前に、検事が来て別室で事前の打ち合わせをした。Hさんはタイ語が判らないので、奥さんが通訳をしていた。打ち合わせの内容は、要するに警察での調書から質問をするので、調書どおりに答えて欲しいとのことだった。

被告人の弁護人(ボランティアの国選弁護士)と通訳(ボランティア)も揃って、10時半に開廷した。佐々木は、護送用の肌色のシャツと短パン姿で両足には足かせをはめられ、鎖を両手で持ち上げながら裸足で法廷に入って来た。顔は日焼けしていて、1年前よりも痩せているようだ。エアコンも扇風機もない拘置所で、粗末なタイ飯しか食べさせてもらっていないのだろう。

初めに裁判長が一言質問をした。
「どうしてあんな大金を現金で受け取ったのか。普通は銀行振り込みにするだろう」
すると佐々木は、
「現金で貸したのだから現金で返してもらった」
 と話した。裁判長の佐々木への質問はそれだけであった。

 検事から女房への質問は、犯行当日の佐々木の嘘から始まった。佐々木は女房に日本へ帰ると言ったらしい。だが、翌日の夕方には戻っている。能天気な女房はビックリしたが、佐々木を疑っていなかった。それから、家宅捜索で発見された現金、パソコン、ラーメン、タバコなどの写真を見せて確認させてから裁判長に見せていた。釣りの話も質問されていた。

裁判長は2人のやり取りをテープに録音して、書記の女性に渡す。彼女はそのテープを聴きながらパソコンで調書を作る。テキパキと仕事をしているのだが、時々携帯が鳴ると外出してしまう。何ということだ、ここは法廷だぞ!!!

被告人の弁護士からの質問は、佐々木が金貸しをしていたこと、釣りの話、タバコは友人からお土産でもらったことなどであった。約1時間で終了した。次は、中園氏の友人のHさんの番だ。先ほど、女房が誓いの言葉を言っていたが、タイ語だからよく判らなかった。Hさんの場合は通訳が先に言ってくれるので、意味が分かった。「神様の前に、大仏の前に誓います。私は真実を答えます。発言します。嘘はつきません。嘘をついたら不幸になります」これが誓いの言葉である。

検事のHさんへの質問の要点は、中園氏から佐々木が空港に迎えに来ると電話があった事実、佐々木から犯行の翌日に電話があったこと、家宅捜索の様子、中園氏と佐々木の関係、中園氏の女性関係などであった。弁護人からは、佐々木との関係、金銭の貸し借り、佐々木と面会した時の様子などを聞かれていた。そして最後に、
「犯人は誰だと思いますか?」
 と訊かれて、
「佐々木です」
 と答えた。
 佐々木は、終始目を閉じてうつむいていた。

 12時20分、今日はこれで閉廷だ。証人は調書にサインをして、書類をもらった。その書類を1階の会計に提出すると、日当200バーツがもらえるらしい。交通費と食事代ということだろうか。

 明日は、証人が4、5人来るらしい。今日以上に長くなりそうだ。

2009年3月3日火曜日

傍聴人 その1







 2007年12月14日、ある日本人がタイで行方不明になった。新聞等のニュースでご存知の方も多いと思うが、中園浩さん(67歳)失踪事件である。その後、空港まで中園氏を迎えに行ったS氏が関わっているのではないかという通報を受け、S氏の自宅を家宅捜索したら、中園氏が持って来た現金、パソコン、土産物、日本製タバコ11カートンなどが発見された。この時点で、警察はS氏をタバコの密輸と窃盗の容疑で逮捕した。

 その後、チョンブリ県の山中から日本人男性と見られる遺体が発見され、DNA鑑定の結果中園氏と断定し、S氏を強盗殺人の容疑で再逮捕した。S氏は容疑を否認していたが、実はS氏は偽装パスポートでタイに入国していたことが分かった。本名、池田研五(59歳)。

 私はこの事件が起こった12月14日は日本に帰っていたので、事件とのかかわりは何もない。ただ、この事件のことはあまり書きたくはなかった。なぜならば、被害者、容疑者ともに知り合いだったからである。特に、容疑者の佐々木氏(池田)とは釣り仲間で、何回も泊りがけの大物釣りに行ったことがある。仲間のことを悪く言いたくはないが、偽名を使ってタイへ入国した事実を聞いて、もう書くしかないか、と思い立ったのである。

 当初、多寡だか350万円で日本人が日本人を殺すだろうかという疑問があった。もしかしたら、保険金殺人かもしれないと思い、日本の中園氏の不動産会社まで調べに行った。事務所は閉まっていて、ネットのHPも閉ざされていた。これは怪しいと感じたが、その後の警察の取調べでも保険金殺人の話は出てこなかった。となると、単なる金目当ての殺人であろうか? それとも遺恨か?

 パタヤ警察の拘置所、ノンパラライの刑務所(拘置所もある)に何度か面会に行ったが、佐々木氏は無実を主張した。昨年の1月17日、パタヤ警察で記者会見があった時も、「自分は貸した金を返してもらっただけだ」と言っていた。それから1年2ヵ月、口を割っていない。

 佐々木の話はほとんどが嘘と出鱈目である。われら釣り仲間には、12月13日からレンタカーで女とホアヒンへ旅行に出かけると言った。レンタカーは数ヵ月前に一度借りていて、その際に自前で窓にフィルムを張っていた。これもおかしい、計画的犯行の可能性もある。タイ人の女房(内縁)には、日本に帰ると言ったらしい。

 中園氏を迎えに行くことは誰も知らないと思っていたのだが、実は中園氏にはパタヤで懇意にしているH氏がいて、14日の朝成田空港から電話をしていた。佐々木が迎えに来ることも話していた。「今夜、大金を持っていくので、お宅の金庫に預かってくれ」と話している。中園氏が持って来た約350万円は、ロングステイ・ビザを取るためのもので、佐々木氏から借りたものではないと思われる。かつて、佐々木氏がバイク事故で入院した時、中園氏に2万バーツ貸してくれるように頼んだが、中園氏は断ったそうだ。そんな人間に100万バーツも貸すだろうか? 中園氏は不動産会社の社長で金持ちだが、金にはシビアな人で、金を貸したり借りたりすることはなかった。

 犯行の翌日、佐々木氏はH氏に電話をしている。「中園さんはいつ来るのだろうか?」と。これを聞いて、H氏は佐々木が犯人だと思ったらしい。でも、証拠隠滅の恐れがあるので、「もうすぐ来るんじゃないの」とごまかした。そして、翌週の月曜日(17日)に日本大使館へ行って、捜索願を出した。

 18日、中園氏の息子とパタヤ警察が佐々木宅を捜索したところ、パソコンと東京三菱UFJ銀行の12月12日付けの帯封が付いた現金、土産物などが発見され、御用となったのである。

 あれから1年3ヵ月が経過した。事件はまだ解決していない。もう佐々木氏の話題も出なくなった頃、裁判所で事情聴取があると聞いた。原告側の証人が呼ばれていた。初日は、女房とH氏だ。私も傍聴させてもらったが、実は事情聴取ではなく公判であった。

 ジョムティエンにあるパタヤ裁判所の第11法廷にて、3月3日(火)午前10時半から公判が始まった。