2008年9月1日月曜日

タイ秘湯ツアー第3弾 その10







続・鉄砲かついで秘湯探し

「おじさん、ちょっと。ドッカムタイ温泉はどこ?」
 バイクに乗ったおじさんに訊ねた。
 すると、おじさんは頷き俺について来いという素振りを見せて、Uターンしてバイクで来た道を走り出した。ラッキー、地獄で仏とはこのことだ。

 走り出したバイクはかなり古く、30キロしかスピードが出ない。その後をゆっくりとついて行った。もうそろそろかなぁと思ったが、バイクは停車しない。そのうちに、先ほどのゲートが見えてきた。どうしたの、おじさん。本当は知らないの?

 ゲートの人に話を訊くと、温泉はここから山道を歩いて2キロということだった。またしても早とちりだ。初めからガイドを頼めばよかった。
「すみません、温泉まで案内してくれませんか?」
 そう話すと、
「いいよ。でも、もう昼だから食事を食べてから出掛けよう」

 時計を見ると11時半。朝7時に食べたきりだから、われわれも腹が減っていた。でも、山の中に食堂などない。水を飲んで我慢するか。

 ゲートの職員たちは、小屋の裏手にあるテーブルで昼食の準備を始めた。準備といっても、青いパパイヤを採ってきてソムタム(パパイヤのサラダ)を作るだけだ。あとは持って来たもち米と茹でた竹の子。合歓の葉も千切って食卓に加えられた。

「さぁ、一緒に食べよう」
 食べ物がなくて困っていたわれわれは、ありがたく頂くことにした。

 私とMさんは辛い料理は大丈夫だが、苦手な新井さんはもち米を丸めて少しだけソムタムにつけて食べていた。本場のソムタムはかなり辛かった。

 昼食を食べ終わり、いよいよ出発だ。職員のひとりが鉄砲をかついで歩き出した。その後をわれら3人が続き、最後にもうひとり若者が付いてきた。2人もガイドが付くとはかなり険しい道なのだろうか?

「どうして鉄砲を持っていくの?」
「野生のゾウやイノシシが出るんだ」
 とおじさん。

 ゾウは大好きである。目がかわいいし、大きな身体の割には大人しいからだ。だが、それは飼いならされたゾウで、野生のゾウは見たことがない。野生のゾウは凶暴なのか? それよりも、イノシシの方が危なそうだ。

 2人の職員は温泉への入り口で、倒れていた看板を立てかけようとしたがダメだった。そこには、「ポン ナム ローン」と書かれていた。これがあればすぐに分かったのに。でも、2キロの山道をガイドなしで歩くことはできない。道に迷ったら大変だし、野生のゾウやイノシシが現れたら危険だ。ガイドを頼んで正解だった。

 森の中の緩やかな登り坂を歩いて行くと、石畳の沢に突き当たった。そこからは沢登りである。沢の中を歩いていると、後方に獣の気配を感じた。イノシシか? 振り返ると白い犬が後を付いて歩いていた。ゲートで飼っている犬である。おじさんが鉄砲を持ち出したので、獲物にありつけると思ってやって来たのだろう。

 30分ほど歩くと小さな滝があり、その上に源泉が湧いていた。水温はかなり熱い。そのお湯が沢に流れていて、先ほどの滝壺が丁度いい温度になっていた。せっかく苦労してここまで来たのだから、入浴しよう。

 私と新井さんは、水着に着替えて滝壺に飛び込んだ。少しぬるめだったが、森の中の露天風呂は風情があって最高だった。多分、ここの温泉に入った日本人はわれわれが初めてだろう。やったぜ、ベイビー!

 ガイドをしてくれた2人には、ガイド料と食事代として300バーツの御礼をした。
 ありがとう、皆さん。またいつか来ます!

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