2008年2月7日木曜日

孤独な最後

ある朝、いつも通り8時半にコンドミニアムの部屋を出てエレベーターホールへ歩いて行くと、近所の部屋の前が騒がしい。警備員や警官が集まっている。 部屋のそばに近づいて
「何かあったの?」と訊くと、
「ファラン(西洋人)が死んでる」と警備員が言う。
「本当?」
警備員は手招きをして、私を部屋のトイレに誘った。誘われるままにトイレの中を覗くと、そこには上半身裸の男がうつ伏せに横たわっていた。
部屋の中では、警官が家捜しをしていた。これは事件だ! でも、争そった様子はないし、遺体には外傷もない。病死なのだろうか? 朝っぱらから嫌なものを見てしまった。遺体に手を合わせて部屋を出た。
エレベーターの中で思い出した。あの部屋の男は、いつも大きな音を出してクラッシックを聞いていた奴だ。テレビはボリュームもいっぱいに上げて、しかも扉を開けいた。まったく近所迷惑な男だった。でも、どうして死んだのか?
翌日の新聞には、バイアグラの飲み過ぎではないか、と書かれていた。49歳のアイルランド人で10年前からパタヤに暮らしているとのこと。49歳でバイアグラを飲み過ぎるのもおかしいが、司法解剖をして死因を特定するらしい。
その後、死因についてのニュースはない。司法解剖をしたかどうかも定かではない。まぁ、外国人が原因不明でなくなるといつもこうだ。
うるさい隣人がいなり、これで静かになった。初めはそう思ったが、よく考えると海外で一人寂しく死を迎えるなんて可愛そうな男である。明日はわが身、酒の飲み過ぎには注意しなくちゃ。

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